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[小説]故人消失ーあとがき、および解説
小説を書き終えて全部終えた気になって、後日解説を出すと言いながら全然出さずすみません。やっと重い腰を上げました。
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<<登場人物>>
主人公:上田 仁
遺品整理の仕事をしている。3年前、宮村家の蔵の二階から落ちて死亡している。入社当時は受かればどこでも良かったと思っているが、仕事をしていくにつれて、徐々に気持ちが変化していく。故人の分まで生きなければとの思いから、現場によくあらわれる。
仁の上司:松本 涼
仁と同じく遺品整理の仕事をしている。仁が死んだとき現場に居合わせて一緒に作業もしていた。その光景が強烈に脳裏に残っており、霊感が強くなる。今でも仁が生きているかのように感じ話すことがある。
仁の幼なじみであり、涼の彼女:上野 奈緒
遺品整理の会社の広報部所属。仁が死ぬまでは仲良くしていたが、死んでからも彼氏の涼が仁と話しているようなそぶりを見せるので不思議に思っている。涼には見えているんだろうと思っていると、生来の霊感の強さから自分も仁が見えるようになった。でもまだ半信半疑なのでそっけなく接している。
依頼人:宮村 楓
宮村家の長女、父は徹といい、3年前に逝去。母はツバキといい、つい最近他界。父の遺品整理をしてもらったとのことで、仁の会社に依頼をしてきた。登場人物の中で強烈に霊感が強い。
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<<ストーリー解説>>
3年ぶりに現場にやってきた仁。でも3年前とは姿が変わっている。客間で話をしていると、楓さんと目が合う。3年前にも来ていたことを知っていた楓さんはまた仁が来たことに驚く、死んだことも知っているので、いるはずがないと思っているが、「そういうことか」と声が聞こえてしまった。仁の納得がかなり腑に落ちたのだろう。霊のくせに声が漏れてしまった。ちなみにお気づきだろうか?仁の発言は物語の中でここしかない。第一話では「俺はアイスかよ」という仁の心の中のセルフツッコミで終わっているが、もうこの時点で仁は溶けてなくなった、この世では事実上存在していない人になっていた。第二話では、新規の仕事が取れず、涼との能力の違いに悩む場面が描かれているが、それも当然である。仁の周りにいた人にたまたま霊感の強い人が集まっただけで、世間一般からすれば何も見えない。新規の仕事などとれるはずがない。3年前生死の境を越えているのだから確実に変わっている。大学ノートを眺めて生きようと思わせてくれるのに、すでに自分は死んでいるなんて皮肉なものだ。待っているという言葉が頭から離れなかったのは、もう自分が徹さんの側に行っているのに、自分は現場にいるという葛藤から来たものだった。第三話では書斎での楓さんとの様子が描かれる。書斎にある死をテーマにした本に目を引かれている。昔はホラーが苦手だったのに今はそうでもないという情報も明らかになっている。これは仁がすでに死んでいて死後の側をしることができたからだ。知ることで恐怖はなくなった。そして生死どちらも経験したので楓さんが死をテーマにした本がずらりと並んでいて不気味だという感想に理解ができない。ちなみに、大きな机の中身を楓さんが知っていたことを不思議に思っている描写があるが、これは蔵の二階の一部が台風によって腐食したことを自然にするためであって、楓さんがカギがかかっているにもかかわらず、中身が重たいことを知っていたことは特に意味はない。よく言えばミスリードである。最終話では涼と奈緒の二人が徹さんを見たところから始まっている。暗に霊感が強いということを表現したかったのだが、伝わっているだろうか。仁も最近見た気がすると言っていて、自分が死んだ側の人間であることが示されている。そして話はいよいよクライマックスへ進む。楓さんが涼たちを蔵へ案内する。涼は3年前の出来事をしっかり覚えているので案内されて、蔵を見て後ずさりをする。雨漏りしていたので変えたという、天井の板を見て逃げるように現場を後にする。当時現場にいなかった奈緒は新しい天板になっているところが、仁の死因だとは知らないので柚子をもらえることにテンションが上がっている。3年前に生きていた仁をみた最後の場所、そして今同じ場所に周りからは見えない姿になっている仁がいるということ。これに怯えて涼は逃げるように外にでてしまった。仁自身も自分がここで死んだということはさすがに強烈に残っている。それで涼に声を掛けられる前にもう向きは変わっていた。自分が死んだ場所に来て、自分が死んだことを受け入れようとしている。もやもやがつながろうとしている。帰りの電車では仁は誰からも見られない。人として認識されていないという錯覚は、錯覚ではない。事実だ。最寄りを降りて家についても、行政上仁は死んだことになっているので、もちろん住人は変わる。玉ねぎ小屋の穴を見て、自分が穴から思いだしたことをはっきりと認識する。そして故人になって存在は消失していて、仁がいたという事実さえも、ごく一部の人間を除いて消失してしまっている。
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<<著者より>>
最後まで読んでいただきありがとうございました。勢いで書いた初小説、伏線を仕込みすぎてすべてうまく回収できなかったことは悔しい。伏線を仕込むのは納得がいったが、いかんせん最後の落ちが弱かったなと自分でも感じる。半ば無理やりつなげたようなものだ。小説家がいかにすごいかを痛感した。また機会があれば、アイデアが浮かべば書いてみようと思う。