国民医療費について。


 2022年9月16日の厚生労働省の発表によると、21年度の全国の医療機関で支払われた医療費の概算は、44兆2000億円に達し、過去最高を記録した。全額自己負担の医療、労災保険などごく一部は含めないが、概算の医療費は公的医療保険、公費、患者の窓口負担分を集計したもので、医療費全体の約98%に相当する。
 外来医療費は15兆3000億円で、昨年に比べると1兆1000億円増加し、とくに小児科の診療所は42.4%の伸び率を示した。新型コロナ感染症の感染拡大による受診控えの影響で、医療費が減少した20年度と比較しても、意味があるかどうか分からないが、4.6%、約2兆円増えた。
 昨年の実質国内総生産(GDP)は540兆円で、そのうち医療費は8.1%を示し、かなりのウエイトを占めた。しかし、この割合は世界先進国中で最も低い値を示すことから、医療費の値上げの有力な根拠となっている。
 医療は身近なものでも、医療費と言うと、案外理解が難しい。全日本病院協会はホームページで、「医療費の仕組み」を公開している。その一部を引用し、医療費について概略を示す。
 2015年度の国民医療費は約42兆3644億円だった。前年度に比べて1兆6000億円、3.8%増加し、GDPに対する比率は約8%を占めた。この7年間で1兆8000億円ほど伸びたが、25年度には57.8兆円に達すると予想されている。
 しかし、わが国は2008年をピークに人口減少時代へ突入し、現在その真っ只中に差し掛かっている。現に毎年40万人以上の人口が減少しつつあり、15年の人口は1億2700万人、2021年は1億2500万人で、約200万人が減少した。医療費は人口に応じて変動するもので、普通なら減っていきそうだが、それが増えるのは不思議に思えるところがある。
 42兆円の国民医療費をみると、国の出費は10兆8699億円(25.7%)、地方からは5兆6016億円(13.2%)で、社会保険など医療保険料は20兆6746億円(48.8%)、患者負担は4兆9161億円(11.6%)で賄われた。国と地方による公費負担は4割程度を占めるが、これが多いか少ないかは国民が決める問題である。
 診療の内容を見ると、医科診療費は約30兆(70.9%)、歯科診療費は2兆8000億円(6.7%)、薬局調剤費は約7兆円(18.8%)、入院時食事・生活費は8000億円(1.9%)、訪問看護費は1500億円(0.4%)、療養費などは5700億円(1.3%)を示した。

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