今年の年金の支給について。

 2025年1月24日、厚生労働省は25年度の公的年金の支給額を前年度から1.9%引き上げると発表した。財政を安定させるため、給付を抑制するマクロ経済スライドを3年連続で発動した結果、年金の支給額は物価上昇率より低い伸びに止まり、実質的には目減りとなる。
 物価の上昇率は2.7%、賃金の上昇率は2.3%である。これでは年金の価値が目減りするのは明らかであり、生活水準が低下する。連合をはじめとする労働組合は今年の賃金を5%の上昇を要求しており、支給額も少なくとも5%以上の引き上げが必要である。政府や官僚にはこういった問題はすぐに分かるはずで、今年の支給額は最低でも1万円は上げる根拠がある。
 賃金アップは大事であるが、脱デフレの政策を取り始めたこの2、3年、主に物価高による消費税の増収によって、毎年税収は最高記録を更新している。24年度の国税の税収は73兆4350億円になり、これは23年度の72兆761億円を上回り、5年連続で過去最高を更新した。また地方の税収も45兆7064億円に上り、3年連続で過去最高を更新する見込みである。
 案の定、最近あちこちで公共事業による土木工事が目立ち、無駄遣いが多いと言われている。昨今の激変の時代の中、この狭いわが国を何回も掘り起こすような無駄は止めにして、国全体を見直し、国土強靱化も100年の計で当たり、大幅に国民へ還元し、国民感情を一新して新しく出発する必要がある。
 しかし、国の根幹の持続性が危ぶまれるこういった重大な局面ではあり得ないが、財務省はこれからもまだインフレを盛り上げて消費税の増収、厚生労働省は保険料の値上げを目論んでいる。国民が窮乏に喘ぐ最中、いったいどういう了見だろうか。とても公僕の言うこととは思えない。
 今年の支給額は、国民年金では保険料を40年間納付した満額1人分で前年に比べて1308円増加し、月に6万9308円、厚生年金は夫婦2人のモデル世帯の場合、4412円増えて、月に23万2784円となるが、受給者にとっては厳しい現実が続く。
 とくに高齢者の多くは収入が固定しているため、物価上昇に対する年金の実質的な価値の低下は、生活の質に直接的な影響を与える。さらに景気の沈滞に拍車をかけ、失われた40年の暗闇が続く。また国民年金と厚生年金の支給額の増加幅を見ると、国民年金の増加額が比較的少なく、国民年金のみで生活している人々に経済的な重い負担を強いる。
 今後の課題として、年金制度をはじめ諸々の制度の持続可能性を確保し、その中で受給者の生活水準を維持するためのバランスをどのように取るかが課題となる。それには年金支給額の引き上げだけでなく、消費税の廃止などによって国民の負担を軽減し、高齢者の生活支援策を強化し、また医療保険料や介護保険料などの負担を軽減することが重要である。

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