米不足について。

 全国的に米が品薄となっているという。農業とは縁のない庶民は、食料自給率の低い我が国でも、米と野菜だけは農林水産省が需要と供給を厳密に管理しており、不足しないと信じて疑わない。
 しかし、毎年新米が発売される前の8月にメディアは米の不足を喧伝する傾向があり、値段を釣り上げ、一部の業者は暴利を貪ってきた。過去3年間の生産量をみると、令和3年は756万トン、同4年は727万トン、昨年は717万トンで、微減だが、一応不足する理由は納得できる。
 この3週間ほど前からスーパーや農協の直販所で価格の上昇が見られ、米が欠品するようになった。これに追い打ちをかけて、大阪府は8月26日に流通状況を改善するために農水省に政府の備蓄米を小売店などに早期に流通させるよう要望した。しかし、絶対的な不足がないため、政府はこれを拒否した。
 大都会と地方での米不足の温度差は大きい。地方では価格は少し上昇しているが、普通に手に入る。しかし、都心では過剰な買い占めとお盆休みが原因で、供給不足が深刻化した。報道はおしなべて昨夏の猛暑による収穫量の低下で供給量が減少し、訪日客数が過去最高ペースで推移して業務用需要が増加し、6月末の民間在庫量が昨年よりも約2割少ない156万トンとなったと一理はあるが、御託を並べた。
 そこへ今月8日に発生した宮崎県沖の日向灘を震源とする地震を受け、南海トラフ地震への備えから各家庭が買いだめに走った。そこへお盆休みが重なり、一時的に品薄になったのは確かである。
 全体に生産量は漸減しているが、しかし、米食を食べる機会は減少しつつあり、大幅な人口減少と高齢人口の増大に伴う消費量の減少に対応するものである。関係者の間ではこれらの隙間を狙って、多くの卸業者が在庫を確保しようと高値で買い付けていると指摘する声がある。
 米不足を煽っても、結局はどこかで米余りになり、多くを捨てることになる。これに対して米農家は困惑している。米の生産者の多くは毎年の消費量が減少しつつあり、出荷しても余る始末で、買取金額も安く、米不足になる理由がなく、まもなく新米が市場に出回り、高い米も値下げして、たくさん消費をしてもらう方がありがたいと思っている。
 思い返せば、1993年わが国は戦後最大の凶作に見舞われ、深刻な米不足に陥り、平成の米騒動が発生した。米国、オーストラリア、中国、タイから合計259万トンを緊急輸入し、翌年は収穫量の増加・回復などで騒動は落ち着いた。
 政府は100万トン程度の備蓄米を保有している。民間在庫量は少ないとは言え、十分にある。また今年の生産量は669万トンの予想で、これで需要と供給のバランスの調整が図られており、全体には米が不足する理由は全くない。
 新米が2~3割の値上げで販売され始めた。

いいなと思ったら応援しよう!