10兆円の大学ファンドと言うが。

 2023年4月4日文部科学省は国際卓越研究大学の初めての公募に東京大学や早稲田大学など10大学が応募したと発表した。今後、半年ほどかけて数校程度に絞り込むようだが、10兆円の大学ファンドの運用益を元に、1校あたり年に数百億円を支援する。
 研究力の低下が続く大学のてこ入れ策として、昨年関連法を設け、12月公募を開始し、今年3月末に締め切った。世界の一流大学に肩を並べる研究力を実現し、世界から優秀な人材を集める大学を目標とする。
 これまでもこの類の企画は何度も行われているが、成功した例がない。今回はその不備を補い、設備や待遇、サポート態勢などの面での手厚い研究環境や、若手研究者の育成環境整備などの充実を図る。
 文科省は競争的資金の配分機関である科学技術振興機構を通して、ファンドは令和3年度末にすでに運用を開始し、運用益の目標は年3千億円を想定している。文科省は6~10年ごとに認定した各大学の継続の可否を判断し、支援は最長25年に及び、6年度以降に2回目の募集をする。
 国立大学は2004年に法人化をした。それ以来毎年予算は減少し、大学の労働環境と研究環境は崩壊寸前の過酷な状態で、すでに天下りの草刈場になったところへ、ファンドを投入した。
 結果は目に見えている。卓越研究大学の認定にあたっても、研究実績に加えて、環境整備や抜本的な組織改革も求められる。厳しい審査が予想され、大規模な天下りの受け入れが条件になるリスクが大きい。
 また大学運営のあり方を根本的に変革することから、必要に応じて新しい規制を設け、一方規制緩和も想定できる点から、役人の天下り確保のため創設した制度と言える一面がある。
 政府が10兆円を出資し、日本道路公団や日本年金機構のように大学法人を特殊法人化し、政府が監督権と許認可権を握る構図である。こうなっては、生産性や成長率などを求められ、研究は二の次三の次となり、大学の意義がなくなり、天下り天国になる。
 今回申請した10大学は、北海道大を除く、旧6帝大で東北大、東京大、名古屋大、京都大、大阪大、九州大の他、筑波大学、東京工業大と東京医科歯科大が統合して誕生する東京科学大、早稲田大、東京理科大の両私立大が応募した。
 私立大学の雄として知られる慶應義塾大学は応募しなかったが、潤沢な資金を持ち、政府の世話にはなりたくない意向のようだ。米国のハーバード大学は単独で7兆円のファンドを有し、年利11%程度で回すという。

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