総裁選について。

 岸田内閣は2021年11月に成立したが、経済政策の失敗と政治不信による低支持率に苦しみ、党内からは岸田降ろしの声が高まっていた。党内の長老で後見人の立場の麻生氏からも支持率を理由に次回の総裁選挙に対して強力な支援の約束をもらえず、岸田氏は24年8月14日に退陣を表明した。
 内閣成立以後、低支持率に喘ぎ、今年4月には過去最低の22.8%を記録し、不支持率は過去最高の75%に達した。その後も微増微減を繰り返し、死に体の状態で何とか政権を維持してきた。
 そのため、早くからポスト岸田が取り沙汰され、幹事長の茂木幹事長と石破元幹事長が有力な後継者とされてきた。他にも河野デジタル相や小泉元環境相、女性は上川外相、高市元総務相、野田元総務相などの名前が挙がっていた。
 お盆明けから始動すると言われていた自由民主党の総裁選レースは、9月までに候補者が出揃い、前倒しで始まった。ところが、ここに来て7月7日に投開票が行われた京都都知事選挙の石丸旋風の影響が現れた。
 とにかく、自民党が変わることを示す最初の一歩として、次の総裁は若い人でないといけないという空気が作られた。それ以上に選挙で野党に勝利できる顔も必要である。しかし、石丸ブームの本当の理由は政治屋や利権を追放し、政治を変える、日本を変えるという壮大な構想にあった。
 若いと言われる小泉氏や河野氏にこういった大転換が期待できるだろうか。それどころか、現状を変えないために、とくに小泉氏を持ち出してきた魂胆があるような気がしてならない。
 総裁選は乱世の相応しく、10人前後の乱戦模様になりそうだが、前首相の菅氏や二階元幹事長らのいわゆる反主流派が推薦し、森元首相も後見人として名乗りを挙げている。父親である小泉元首相をはじめ、党内では着々と小泉首相への体制が構築されつつあり、いよいよメディアは小泉氏に対する待望論を盛り上げようとしている。
 茂木氏や石破氏が総裁では、一見、自民党が変わったという印象はない。しかし、政策に忠実な石破氏が一番自民党や日本を変える可能性が高く、また誠実な人柄は自民党の政治不信の危機を乗り越えるには、最も相応しく、本命の候補者である。
 自民党ではそうならないのが常であり、今回も石破氏は潰される可能性が高い。奇妙なことに、これまでの発言や政治家としての能力や経験が不足しており、この危機状態ではとうてい総理の器にはなり得ない小泉氏が、河野氏よりも害がないだけにマシという理由で最有力候補者として急浮上した。
 これが現実になると、何も変わらない。

いいなと思ったら応援しよう!