名目GDPは600兆円。

 2024年8月15日、内閣府は4~6月期の名目GDP(国内総生産)の速報値は、年換算で初めて600兆円を突破したと発表した。500兆円を達成してから32年ぶりに大台に乗せた。
 しかし、これは物価の高騰によるもので、水ぶくれの要素が大きく、実際に経済成長の内容は乏しい。物価の変動を考慮した名目GDPは前期比で1.8%増え、年率換算で7.4%の増加を示した。
 一方、物価変動の影響を除いた実質GDPは、前期に比べると0.8%の増加で、年率の換算で3.1%の増加を示した。物価が一気に2倍になった場合、名目GDPは単純に2倍になるため、実質GDPの方が経済の実状を把握する上で重要である。
 需要項目の動向を見ると、認証不正問題によって停止していた自動車の生産再開が大きく寄与した。またエアコンやスマートフォンなどの売り上げが8.1%も急増し、個人消費全体を大きく押し上げた。しかし、これらの売上げの上昇は一時的なもので、長期的な経済成長にはつながりにくい。
 昨年の経済に目を向けると、23年の名目GDPは、前年よりも5.7%増加し、591.4兆円を示した。これを米国ドル(1ドル=140.5円)に換算すると、4.2兆ドルで、1.1%の減少となり、ドイツの4.4兆ドルに抜かれて世界4位に転落した。
 国内ではコロナ禍からの回復で消費や輸出が伸び、物価高の影響もあって、名目GDPは過去最高となった。一方、実質GDPは1.9%増え、ともに3年連続のプラス成長となった。しかし、問題はわが国の経済の長期低迷で、国際通貨基金(IMF)のデータによると、0.7%の成長率にすぎない。
 物価の高騰が名目GDPの増大に大きく寄与している一方で、実質的な経済成長は依然として低調である。このことによって、国民の生活実感としての経済成長は乏しく、物価高騰の影響が強く示唆される。
 今年の国の予算は約112兆円であるが、GDPが600兆円の大台に乗ると、本年も大幅に税収が増え、財務省が口喧しく言うプライマリーバランスも黒字の見通しとなってきた。このため、来年の予算は大判振る舞いで、120兆円程度に膨らむと予想される。
 これだけ順調ならば、いよいよ沈滞していた購買力を直接的に向上させる消費税を廃止するべきである。当然、個人消費が増加し、経済全体が活性化し、実質GDPの大幅な伸びが期待される。
企業も相変わらず空前の黒字で、膨大な内部留保を抱えている。予算が不足すれば、これを活用し、とくに設備投資や研究開発、人材育成などに資金を投入し、経済成長を促進する。

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