イランの核関連施設への攻撃の可能性。

 中東地域は複雑な歴史と政治的緊張により、長年にわたって世界の注目を集めてきた。とくにイスラエルとパレスチナ間の紛争は、国際連合はじめ国際社会における重要な焦点となっており、この地域の安定と平和を目指した取り組みが続けられているが、一向に出口が見えない。
 2023年10月7日、ガザでのイスラム武装集団ハマス派に対する大規模戦闘が始まってから1年が経過した現在、イスラエルはレバノンのヒズボラ派やイエメンからのフーシー派の攻撃に直面している。またイラン、エジプト、シリアとの小競り合いも続いている。
 ヒズボラ派はイランだけでなく、ロシアからの支援を受けている可能性がある。またイスラエル軍がこれだけの手広く戦闘を継続するためには、情報機能や偵察機能を含めて、米国の相当な支援が不可欠であるのは言うまでもない。米国内でも同国の大規模な報復に積極的な声は高まりつつある。そのため中東和平の実現は極めて困難となっている。
 戦火は中東地域全体に拡大し、すでに米国とロシア・中国による第三次世界大戦が始まっていると言える。また現在の状況はイランを挑発する千載一遇の好機と考えられる点から、イスラエルはイランの核関連施設への攻撃を検討しているとの見方がある。
 同国は大規模戦闘以来、東エルサレムやヨルダン川西岸、ガザ地区、ゴラン高原での強制入植を行い、多方面で武装組織との戦闘を継続している。国連によると、イスラエルとパレスチナ間の緊張は、占領地での入植活動とパレスチナ人に対する強制立ち退きの増加によって、深刻な状況にある。こういった行動は武装組織の壊滅や人質の奪還を目的とするよりも、自国の領土拡大を目的としている。これに対して、国連は国際社会に対し、同国の占領拡大と人権侵害についての意識を高め、行動を促している。
 ヒズボラ派は7日に135発の飛翔体をイスラエル領内に放ち、深夜には中部テルアビブ近郊のイスラエル軍情報部門の基地を狙って、5発を発射し、一部は迎撃された。イスラエル軍も反撃し、レバノン南部への集中的な空爆を行い、ヒズボラのミサイル部隊や情報拠点などを標的にし、これに先立ち地上部隊を援護する空爆も行った。
 ロイター通信によると、イスラエルの兵士2人が国境付近で死亡し、レバノン側では数十人が死亡した。レバノン保健省によると、昨年10月から6日までの死者は2083人、負傷者は9869人に達している。
 イスラエルのネタニヤフ首相は、ガザの戦闘1年を迎えた演説で、「我々は戦いを続け、団結して勝利する」と述べ、ハマスの排除やハマスが拘束している人質の奪還などの目的を達成する決意を表明した。
 戦火は拡大する一方である。

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