次期NHK会長はこの人しかいない。

 2023年1月に任期満了を迎えるNHKの前田晃伸会長(77)の後任として、元文部科学事務次官の前川喜平氏(67)を推す動きが広がっている。8年間も続いた安部政権に忖度し続ける「アベチャンネル」を終わりにしようと市民運動が立ち上がった。新しい市民団体「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」は、11月4日午前に、NHK経営委員会に要望書を提出し、午後に衆院議員会館で記者会見を開いた。
 大手のメディア、フリーのジャーナリストを含めて、30人以上が集まったが、これからの活動の盛り上がりが注目される。共同代表の丹原氏によると、10月8日に「市民とともに歩み自立したNHK会長を求める会」を発足させ、23日に東京で3回目の会議を開き、活動方針を決めた。
 丹原氏は公共放送で「みなさまのNHK」のはずがアベチャンネル化している、受信料で成立しているNHKは市民とともに歩むべきで、前川氏を次期の会長に推薦する運動を展開する趣旨を述べた。
 紹介された前川氏は、「とても光栄のことで引き受けることにした。私がNHK会長になったあかつきには、あかつきになるかどうかわかりませんが」と笑わせてから抱負を述べた。
 同氏は等中等教育企画課長在職中に、小泉政権の三位一体改革で、プログの中で公立小中学校の教職員給与の国の負担が2分の1から3分の1に引き下げられた問題を巡って、クビと引き換えに義務教育が守れるなら本望と与党を批判した。
 安倍政権の下の17年に森友学園問題と加計学園問題が発覚したが、その際前川氏は告発のための記者会見をたった一人で行い、政権の嘘を暴いた。事務次官まで上り詰めた官僚として、行政史上かつてない大事件であった。
 政権から不当な圧力を受けたにもかかわらず、「総理の意向」「行政が歪められた」などと発言し、屈せず公僕として質朴剛健を貫き、次官当時定時制高校の教壇にも立った逸材である。同氏の言動は放送法に謳われた公平公正や真実を追求し、健全な民主主義のために資するジャーナリストの精神と大いに重なる。
 NHKの会長人事は、12人の経営委員会の9人以上の賛成で選出される仕組みである。第1次安倍政権以降は官邸の意向を強く反映する形で、15年間財界出身者の5人が会長を占めてきた。
 現会長の前田氏は元みずほフィナンシャルグループの会長で、前会長の上田氏は元三菱商事副社長、その前任者の籾井氏は元三井物産副社長だった。とくに籾井氏は「政府が右ということを左というわけにはいかない」と発言し、政府の代弁者である点を自ら告白した。
 経営委員会が会長候補として前川氏の名前を挙げる可能性は限りなく低いとみられる。しかし、これに刺激されたNHK党首立花氏は、「前川さんと公開討論会をやりたい」とNHKの問題や会長人事が注目される世論喚起のチャンスになるとして、討論会の開催を訴えた。
 貴重な一石である。

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