23年度の経常収支について
2024年5月10日、財務省が発表した国際収支速報によれば、昨年度は25兆3390億円の黒字となった。貿易赤字が縮小し、海外での企業の投資収益が大幅に増えた結果、黒字額は過去最大を記録した。
経常黒字は2年ぶりに増加し、黒字額は比較が可能な1985年度以降で最大の07年度(24兆2276億円)を上回った。25兆円といえば、昨年の上場企業の純利益33.5兆円の3分の2以上を占める。また純利益に占める海外での利益がどの程度かについて詳しい情報がないが、相当な利益である。
経常収支は国と他国との間の取引を表す統計で、貿易収支(輸出と輸入の差)、サービス収支(サービスの輸出入)、一次所得収支(投資や労働から得られる所得)、二次所得収支(送金など)などの合計である。
内訳を見ると、貿易収支は3兆5725億円の赤字で、それでも前年度から赤字幅が縮小した。23年度の輸出額は前年度比2.1%の増加で101兆8666億円、輸入額は10.3%減少の105兆4391億円を示した。この理由は輸出が大きく伸びた訳ではなく、原油などの資源価格の高騰が改善した。
一次所得収支とは、国内居住者が外国から得た所得と、外国居住者が国内から得た所得との差を示すが、この収支が35兆5312億円に膨らんだ。これは主に海外に設立した子会社や関連会社からの配当や利益を示す直接投資収益と、外国の株式や債券を保有することにより得られる配当や利息による証券投資収益に大別する。
昨年の直接投資収益は約23.4兆で、証券投資収益は 約10.5兆円に上ったが、いずれにしても、企業の海外での証券投資による収益の割合が大きいと思われる。正しく金融立国の面目躍如たるところがあるが、これほどの黒字でも、わが国の経済は不調であり、何とも奇妙な話である。
黒字が増えたという意味は、それだけわが国は外国から巨額な資金を得たことになり、本来は通貨の価値が上昇する。それにもかかわらず、円安が進んでおり、逆の現象が起きている。
このような状況は、外国での利益を国内に持ち込むのを阻止する何らかの要因(例えば規制や税制など)が働いている可能性がある。こういった問題が円の国際的な需給バランスに影響を与え、その結果として円安を引き起こしているという。
貿易収支は実際の金銭の出入りとしても、投資による利益はただの帳簿上の数字にすぎないとも言われるが、現地で投資活動を続ける限り、当然、再投資をする必要がある。また長期間海外で利益を確保し、円の信用を維持するために、黒字の半分程度は投資に回っているようで、過去最大の経常収支を示しても、円高の要因になりにくい。
今一つ、納得がいかない。
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