フジテレビ問題。

 2025年1月24日、村上総務大臣はフジテレビが前日に第三者委員会の設置を決定したことを受け、情報流通行政局長からフジテレビおよびフジ・メディア・ホールディングスの嘉納代表取締役会長に対して、早急に問題の調査を進め、その結果を踏まえ、適切に対応するよう要請したと発表した。
 コマーシャルの差し止めが相次いだフジテレビの一連の問題は、民間放送事業の存立基盤に影響を与えかねないばかりか、わが国のメディア業界と社会に深刻な影響を及ぼしている。
 この問題に対して、総務官僚がフジテレビへの天下り先を確保するために対応が甘くなっているのではないかとの指摘があった。村上氏は国家公務員の再就職に関して、公務の公正性とそれに対する国民の信頼を確保することが重要であると述べ、総務省としては職員の斡旋などを禁じた再就職規制の遵守を徹底していると説明した。
 そして、再就職については同社が自らの判断で採用したものであり、府省庁が企業などに斡旋して再就職させるいわゆる天下りという事実はないと答えた。とうてい納得ができる話ではなく、詭弁を弄し、身内に対して対応が手緩いと言われても仕方がない。
 本件は24年12月に「女性セブン」や「週刊文春」によって報じられた23年6月に発生した、大物タレントの仲居氏と元職員の女性アナウンサー渡邉氏との間に生じた性的トラブルが発端となった。
 本件には同社の幹部である編成部長の中島氏が深く関与し、同氏は仲居氏と大物タレントの松本氏のプロデューサーを務めたことがあり、密接な関係がある。両タレントを接待するため、女性アナウンサーや職員の上納システムの下地を作っていた。仲居氏は15年9月に東京・六本木のグランドハイアット東京のゲストルームで、ダウンタウンの松本氏と女性4人を交えた「部屋飲み」にも参加していたことも判明している。
 職員は性的トラブルを3人の上司に相談し、港社長にも連絡がいったと思われるが、現在まで何の対応もない。それどころか、フジテレビは仲居氏を起用し続け、適切な調査を行わず、問題を隠蔽し続けた。
 一向に謝罪会見も記者会見も開こうとはせず、社内の改革を決断しようとしないフジ・メディア・ホールディングスに対して、大株主である米国の投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」は、長老の日枝氏の退任を求め、莫大な損害を被るという理由で抗議をした。
 同ホールディングスはフジサンケイグループの持ち株会社で、放送事業を中心に、メディア・コンテンツ、都市開発・観光、その他の3つの事業部門を運営する。フジサンケイグループはフジテレビジョン、ニッポン放送、文化放送、ポニーキャニオン、産経新聞などを傘下に持つ。
 それからも報道が続き、フジテレビでは女性の上納制度が長年続いてきた事実が判明した。同社では番組の制作の方針は企画中心ではなく、最初に大物タレントを起用し、これに基づいた番組を製作する。またこういった業績によって出世が決まる慣習も残っており、30年以上も現取締役顧問の日枝氏の独裁体制が続いていることも分かった。
 このような陳腐な体質が続いてきたが、1月27日に社長が交代しても、現在まで改革の兆候が見られない。フジテレビが属するグループは巨大な組織で、未だこの組織力と資金、権力を用いて、諸悪のもみ消しを計ろうと奔走している。
 これらの問題は非常に複雑で、多くの社会問題を浮き彫りにした。とくに女性の人権侵害は私たちの身辺でも日常茶飯事に起きている。9000万円もの高額な解決金が支払われたという報道は、大きな衝撃を与えた。
 こういったことから、仲居氏が出演していたテレビやラジオの番組、コマーシャルは次々と放送休止され、25年1月に仲居氏は芸能界引退を発表した。フジテレビはスポンサーに料金の払い戻しを余儀なくされ、莫大な損害を被り、倒産の瀬戸際に追い込まれている。
 総務省からは4人の高級官僚がフジサンケイグループに再就職している。女性初の内閣広報官を務めた山田氏はフジ・メディア・ホールディングスの社外取締役、山川氏はフジグループのエフシージー総合研究所、山崎氏はフジテレビ常勤顧問、奈良氏はサンケイビル顧問として勤務している。
 このように天下り人事が明白であっても、大臣の対応は他人事で、単なる形式的な対応であるとの批判は免れない。問題は始まったばかりで、今後どうなるか分からないが、フジテレビが第三者委員会を設置しても、根本的な問題の解決には至らず、表面的な対応に終わる可能性が高い。

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