国土強靱化計画について。
2013年12月、自然災害が多発するわが国で、強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災と減災を目的として、自由民主党の元幹事長の二階氏ら他11名の議員立法によって、国土強靱化基本法が成立し、同月から施行が行われている。
この計画は安倍政権の下、11年3月の東日本大震災を機に、国土強靱化の名による公共事業の大盤振る舞いが復活した。将来、消費税の増税が当てられる可能性もあり、また10年間で200兆円規模の事業を計画する意見も散見する。
この法律は国土強靱化の推進を名目に、大規模地震、津波、噴火、台風、局地的豪雨のほか、トンネル崩落など老朽インフラ事故を想定する。防災と減災の考え方に基づき、社会資本の整備、迅速な避難、人命救助の体制確保、帰宅困難者対策、鉄道・高速道路の代替ルートの確保、防災教育の充実、国の中枢機能のバックアップなど広範、多岐にわたる問題が含まれる。
しかし、前述の解釈はいかようにも適応が可能で、目的外の使用も多く、予算の無駄遣いの温床と言える。防災、減災の美名に乗じたバラマキ予算による選挙対策あるいは地盤培養行為で、本当に必要な対策が軽視されている。
公共事業に対する国民感情は悪い。これには第一に費用がかかりすぎる、無駄が多い、政治家と役人と業者は癒着している、不透明さがある、談合が広く行われているなどの理由がある。やはり、特定の場所の工事が続くことや同じ企業の選択などをみると、その様子が窺える。
本事業は地方の再生や創生などの事業と重なる。時の首相は石破氏で、地方創生担当大臣を歴任し、地方の事情に詳しく、また防災相の設置を主張する。適役の首相で、これからの取り締まりが大いに期待できる。
災害対策を趣旨とするなら、官民一体となった家屋の強靱化や従来の土木事業を中心とする防災も必要であるが、時代は変わって、デジタル防災や普段から使用しているものやサービスを非常時にも役立てるという考え方が潮流となりつつある。
例えば、スマートフォンアプリを活用した避難情報の提供や、クラウドサービスを利用したデータのバックアップなどが挙げられる。また蓄電池や小型の太陽光発電装置の備えも必要となるかもしれない。
近年の公共事業の予算は、19年度以降6.1兆円で固定しており、その中に国土強靱化関連予算も含まれていたようだ。これに加えて、18年度から防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策、20年度から防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策が補正予算で21年は約1.7兆円、22年度と23年度はそれぞれ約1.3兆円ずつが上積みとなった。24年度の公共事業費も6.1兆円であるが、1月に能登半島地震が発生したことから、総額は8兆円を超える見込みとなっている。
国土強靱化による公共事業費の恒常化は、建設業界には極めて重要で、全国的にばらまかれている。知人から聞いた話によると、福島県の白河市では道路維持工事はむろん、遊園地の遊具の更新にも使われたようだ。
大阪市では道路の整備、交通・物流の整備、都市整備など関西万博に伴うさまざまなインフラ整備にも使われており、目的外の使用も多い。愛知県の瀬戸市でも道路補修工事はもちろん、瀬戸川の橋梁の設置やプロムナード計画にも利用されている。
本市は古い歴史を持つ名古屋市の衛星都市で、1988年に同市内の中心を流れる瀬戸川文化プロムナード計画が作られた。05年の愛知万博の開催に伴って、大規模な都市開発が行われたが、万博と直接関係のない地区でも巨費が費消された。
その後再びプロムナード計画が進められ、この延長上に現在の強靱化計画がある。もう25年以上、考えようによっては35年以上も、繁華街の外れの同じ場所で、道路、河川、新橋の設置、下水道などの工事が断続的に続いている。
しかも、担当者の恣意による何回もの計画の変更と測量があり、また毎回ではないが同じ企業が工事を担当している。市街地で川幅は広くできなくても、それを広げるのを目的にして国土強靱化計画が適応されている。