医学生の社会経済的背景について。

 医学部の学生が裕福な家庭出身者が多いのは、世界共通の現象である。米国では、医学生の背景を調査するために、人種、経済状況、親の学歴など、さまざまな属性や要因を指標として多くの研究が行われている。
 医学生の中には白人やアジア系が多く、多様性を図るために人種ごとに定員枠を設けている大学もある。しかし、このような取り組みが逆差別と見なされ、訴訟に発展する場合がある。わが国でもこのような問題は30年以上も前から、一部の医学教員や関係者によって、熱心に議論されている。
 医学の進歩や時代の要請によって、医学教育は改善が進んでいるものの、まだ多くの課題が残っている。大学は優れた学生を選抜し、良質な医師を育成しようとするが、教育の改善に取り組んでも、それだけで良質な医師を育成するのは難しく、教育にも限界がある。
 どんな学生を医学部に入学させるのか、この根本的な課題を検討する目的で、現在どんな社会経済的背景を持つ学生が入学しているのか、現状を把握する必要がある。岐阜大学名誉教授の鈴木らは、2021年に全国の医学部3年生と4年生の1991人の学生を対象に、インターネットによる匿名アンケート調査を行った。
 その結果、医学生の中には家族の年収が1800万円以上であるという高所得家庭が25.6%を占めた。この数値は薬学生(8.7%)や看護学生(4.1%)よりも有意に高かった。また医学生の33.2%は親が医師で、開業医の師弟が多い点もあるが、医学部以外の学生よりも有意に高い。経済的な背景よりも、医学を志望する強い動機の一つとなっている。
 医師も自由民主党の国会議員と同様に世襲制が目立つが、医師の子は医師で、それで非難されることは少ない。教育の機会は均等化していても、経済格差や大都会と地方とでは教育格差が大きい。田舎の出身者が東京大学へ進学すると、天才と言われる。
 本来、人間は人柄や地頭が大切だが、都会では幼児教育から高校教育まで整っており、経済状態によって種々の選択ができる。しかし、極論すれば、最難関の東大の受験も暗記が主体と言え、進学校や学習塾ではこれを要領良く教える。近年はネット環境も整っており、場合によってはAIも利用でき、田舎でも家族や本人の自覚と努力で、医学部の進学はそれほど難しいものではないと考える。
 優秀な成績であれば、奨学金や融資も受けることができる。地方大学の医学部は地域枠を持っているので、経済的な利便性もある。しかし、最近の医師は鼻持ちならない人も多く、そのため医師や医療の質が低下しかねない。このような理由から、善良な人が医学部に進学することが望まれている。医療に尽力を尽くしたいと思う人は、ぜひ医師を目指してもらいたい。

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