マイナ保険証の意義と課題。
マイナンバー制度に基づく保険証で、個人の健康保険や医療サービスに関連する情報を一元的に管理することを目的とする。このシステムの導入により、医療機関や薬局での利用者情報の確認が迅速かつ正確に行えるようになり、過去の診療記録や投薬情報が迅速に確認できるため、適切な医療提供が可能となる。
しかし、従来の保険証がなくなることに対する懸念が強い。また前述の利点は必ずしもマイナ保険証に特異的ではなく、従来の保険証でも可能であり、マイナンバーカードに変わるだけに過ぎない。
2024年12月2日から、いよいよ健康保険証の新規発行が停止された。マイナンバーカードと健康保険証が一体化したマイナンバーカード健康保険証への移行が本格的に進み、医療機関へ受診をする際には毎回マイナンバーカードと暗証番号を使用して受付をする。暗証番号を忘れたり、記憶ができない高齢者も多く、この点が課題となる。
この保険証の利用は23年4月から可能であったが、現在の利用率はせいぜい20%程度にとどまり、低迷している。これは政府と役所がいかに国民の信頼がないかを物語っているが、厚生労働省などは普及に向けて様々な取り組みを行っており、利用者の理解と協力を求めている。
これまでに発生した問題として、23年5月に別人の情報に紐付けられた事例が発覚した。その後同様の事例が散発的に発生し、世論が盛り上がり、一時は大騒ぎになった。政府は1億6000万件分のデータを点検した。その結果情報の紐付け誤りが9223件、窓口で負担割合が違って表示されるトラブルが2万1574件確認され、中には10割を請求された患者もいた。
現在、マイナカード保有者約9400万人のうち約7600万人の利用を登録しているが、本年10月時点の利用率は16%に留まる。厚生労働省が8月にマイナカード保有者2000に実施したインターネットアンケートでは、約40%が個人情報の一元管理に不安を感じ、約38%が持ち歩いて紛失する点を心配していると回答した。
それも当然のことで、マイナンバー制度は「社会保障・税番号制度」とも呼ばれ、社会保障や税金の給付と負担の公平化、デジタル化による行政事務の効率化、国民が社会保障(年金・医療・介護など)の給付を受ける際の利便性向上を目的とする。マイナ保険証はこの一環であり、これらの情報と連動する。
当初、マイナンバーカードの発行は任意であったが、保険証が廃止されると、マイナ保険証としての発行が事実上必要となる。万が一情報漏洩が発生した場合でも、政府は責任を負わない方針である。
現状ではマイナ保険証制度は様々な問題を抱えるが、漸次改善するだろうが、他の先進国ではマイナンバーカードのような制度は使い勝手が悪く、廃止される傾向にあり、わが国だけが積極的に推進している状況にある。例えば、ドイツでも一つの番号で多くの情報を紐付ける点に不安が根強く、思想や信条なども漏洩する危険が指摘されている。
マイナ保険証には利点も欠点もあるため、利用者は十分に理解した上で利用することが重要である。登録しない場合は、「資格確認書」(保険証同様の5年有効)が保険証の有効期限までに無料で自動的に送付される。