マイナ保険証の導入とその影響。
2024年12月2日から、現行の健康保険証の新規発行が停止され、マイナ保険証への一本化が本格的に始まった。本制度の利用は23年4月から可能であったが、わが国のデジタル化推進の一環として行われた一大改革であるにもかかわらず、多くの課題が残されている。
第一にデジタル化による省力化や単純化が必ずしも良いとは限らない。厚生労働省などは本制度の普及に向けて様々な取り組みを行っているが、最近トラブルは少なくなったようだが、これまでに発生した問題、例えば多数の情報の紐付けの誤りや、窓口での負担割合表示の誤りなどがあり、システムの改善が求められていた。
今後も、利用者の理解と協力が求められる場面があるだろう。マイナ保険証では、医療機関の受診方法も大きく変わり、マイナンバーカードと暗証番号が必要となる。
個人の健康保険や医療サービスに関連する情報が一元的に管理され、医療機関や薬局での手続きが迅速かつ正確に行えるという大きな利点がある。その一方で、個人情報の一元管理に不安を感じる人も多く、これまで本制度が普及しなかった主な理由となっている。
10月時点でのオンライン資格確認における利用率は15.7%と低く、多くの人がまだ利用していない。そのため、マイナ保険証を持っていない人には5年間有効な「資格確認書」が交付され、さらに1年後までは従来の健康保険証も利用可能である。
こうなると、12月2日以降はマイナ保険証、従来の保険証、資格確認書の3種類のいずれかを使用できることから、計7つの方法が混在する。医療現場では混乱が生じる可能性があるという。
またマイナンバーカードを持っていても、機器の故障などでオンライン資格確認ができない場合は、マイナポータルの画面や資格情報の提示で受付を行う。厚労省によると、再診の場合は過去の受診で請求に必要な資格情報を把握していれば、受診者への口頭確認で済むようだ。
何事も制度や方法の変更時には、不慣れによる不具合が発生するのは当然である。こうした問題は時間の経過とともに改善される。サイバーセキュリティ対策も強化されるだろうし、利用者も新しい制度に徐々に慣れてくる。
それでも、多くの脆弱性が残っている。悪用例としては、マイナンバーカードの顔写真欄に偽の顔写真を貼り付け、本人になりすました不正な住民票の入手や書き換え、印鑑登録の変更、婚姻届や死亡届などの行政手続きが行われる可能性がある。
またプロのハッカーはシステムの脆弱性を狙い、システムを破壊したり、個人情報を盗む方法を次々と進化させる。そのため、サイバー攻撃の可能性は常に存在し、これに対しても備えておく必要がある。
さらに役所のミスや職員の悪用といった人為的な要因も無視できない。