対岸の火事。
中国の不動産バブルは崩壊寸前で、中国経済に深刻な問題が起きようとしている。世界第二位の経済大国である中国は、多くの国と貿易や投資の関係を持っており、世界経済にも大きな影響が波及する可能性がある。08年の米国発のリーマン・ショックは北京オリンピック開催後の景気後退が誘因になったと言われる。
不動産バブルは1990年代に始まった。当時の江沢民政権は経済と産業の成長を促進するため、不動産市場を自由化した。個人が住宅を購入できるようになり、これに伴って不動産開発企業は急増した。
この自由化によって経済成長に果たした役割は大きく、都市化と人口の集中化が進み、消費や投資を刺激し、また政府の財政収入や金融安定に寄与した。不動産業は関連分野を含めて国内総生産の3割弱を占めるが、その反面、経済の過熱や無駄な開発、社会の不平等や環境問題など、中国社会に多くの負の影響を与えた。現在、政府は不動産バブルの縮小と経済の調整に取り組んでいるが、この過程で新しい問題やリスクに直面する恐れがあり、難しい局面を迎えている。
不動産開発企業は事前販売制という方式で住宅を販売してきた。これは住宅が完成する前に、代金の一部を支払う形態で、企業は回収した資金を次のプロジェクトに回し、需要と供給の均衡が崩れることなく拡大した。しかし、このシステムは一種の自転車操業であり、不安定なバランスの下で成り立っていた。
ところが、20年8月に中国政府は不動産市場の過熱や金融リスクの管理の必要性から、「三道紅線(三本の赤線)」という規制強化の方針を打ち出した。これは財政状況に不安のある不動産開発企業に対する銀行融資を規制し、過剰な不動産投機の抑制を狙いとしている。
当然、わが国のバブル経済破綻と同様に、不動産開発企業の資金調達や投資意欲を低下させた。この結果、総負債比率などの基準に触れる企業への融資に制限がかかり、30社を超える企業が次々と債務不履行に陥った。現在、政府はこの沈みいく状況を重く見ており、不動産市場への救済案を発表し、事態の打開を図っている。
不動産バブルの事例として、最も市場へのインパクトが大きかったのは、「恒大集団」の債務不履行である。「恒大集団」は最大級の不動産開発企業であり、8月に米裁判所にドル建て債務48兆円を抱えて破産を申請した。このショックが最大手の「碧桂園」まで飛び火すると、中国経済は危険水域に入る。
もし中国の不動産バブルが崩壊したら、人類史上最大の規模となる。そうなった場合世界経済にどのような影響を与えるか分かっていないのが現状で、とくにわが国の経済は中国依存度が極めて高く、必ず実体経済に悪影響が出る。
静観してはいられない。