電通と東京五輪大会。

 東京2020オリンピック・パラリンピックの大会運営事業に関連した談合事件で、電通グループと電通元幹部逸見被告(56)は独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪に問われている。
 2023年11月15日、電通側は約437億円の談合規模の大部分を占める約431億円の随意契約分について、談合は認めないと主張し、争う方針を固めた。本件は明確な法律違反の部分を取り上げていることから、これだけの金額で済んでいるが、東京五輪と電通の関係を考慮すると、ほんの一部に過ぎない。
 電通は広告業界の最大手であり、東京五輪のマーケティング専任代理店として指名されていた。また国際オリンピック委員会(IOC)や日本オリンピック委員会(JOC)とも密接な関係を持ち、放映権などを独占的に販売できるなどの権利を多数保有していた。
 しかし、これらの重要な役割を担ったにもかかわらず、電通は五輪招致の贈収賄、スポンサー受託収賄をはじめ、多くの問題を引き起こした。それにもかかわらず、電通は反省するどころか、謙虚さの欠片も見られない。歴史的にみても、度重なる違法行為を繰り返してきても、利益が最優先で、法令順守やモラルを守る気は乏しい。
 普通の企業なら廃業に追い込まれるところだが、既得権に長年どっぷり浸かっているためか、法令順守やモラルは全く感じられない。またこれほど大規模な事件を起こしても、相変わらず、公的な機関が電通に事業の発注を行っているのは驚きである。
 大会組織委員会は電通と強い癒着関係があり、随意契約で電通1社だけと取引をし、多くの契約は電通の言い値で成立した。当初7340億円の予算は膨張に膨張を重ね、道路整備など関連経費も加えた総額は3兆6845億円に上り、結局、5倍の費用がかかった。
 電通や人材派遣会社のパソナと親しい関係にあった安倍元首相が両社に利益を与えようとした動機が浮上している。両社は人件費や管理費名目の多額にのぼる中抜き(中間搾取、ピンハネ、丸投げ)が国会審議やテレビ番組上での告発などで問題視され、さまざまな推察や憶測を呼んだ。9割もピンハネをした強欲な事業もあり、電通は五輪関係の費用を膨張させた張本人と言える。
 この問題は国民生活に広い影響を及ぼす悪質で重大な事案に該当する。五輪の東京招致の問題やコロナ感染症の大流行中に大会を敢行した蛮行などを含めて、国内外から大きな批判を浴びている。公正な競争と透明性を重視する大規模イベントの運営に対する警鐘となったが、汚職日本の汚名を世界に留めた。

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