非課税枠の引き上げ。
10月の衆議院議員選挙で少数与党に転落して重い腰を上げざるを得なくなった自由民主党の税制調査会(宮沢会長)は、2024年11月6日に今回躍進した国民民主党が訴える所得税の非課税枠の引き上げを中心に、来年度の税制改正に向けた議論が本格化した。
失われた30年間、自民党が政権をほとんど担い、財政は財務省に任せきりにしてきた。その結果、長年にわたって所得の減少、物価の上昇、保険料や公共料金の高騰など政府の搾取に苦しんできた国民は、もう我慢ができなくなって、今になって、与党の腐敗と怠惰、経済低迷と不景気の責任は官僚が主導する政官財の癒着による政治体制にあると気づいた。
今回の衆院選挙で、国民民主党は公約の一つとして非課税枠の年収103万円の壁を撤廃し、178万円に引き上げると掲げた。これが実現すれば、所得税の他に住民税などの負担も減少し、幅広い収入層の手取り額が増える。こうなると、政府の試算によると、所得税が7兆~8兆円減少するとされる。
非課税枠の引き上げは、パートタイムやアルバイトで働く人々にとって大きな恩恵になる。現在、年収が103万円を超えると、所得税が発生するので、多くの人がこの枠内で働くことを選択する。しかし、非課税枠が引き上げられることで、より多くの収入を得ることが可能になり、労働意欲が高まる。
同党の玉木代表は、この減税を補う財源について、過去の予算の使い残しや税収の上振れ分の活用を指摘した。具体的には昨年度の予算の使い残しが7兆円、おととしは11兆円もあり、さらに昨年の税収は予想よりも2.5兆円も多かった。これらの資金を精密に検討すれば、7兆円程度の減税は十分に可能となる。
また、23年度のわが国の消費税の税収は、物価の高騰によって、23兆円にも達し、過去最高を更新した。ここに国民民主党はじめ各党から、消費税の5%の減税を主張する根拠がある。もちろん、ここからの補填も考えられるが、その他に特別会計の剰余金、通称「埋蔵金」も投入するべきだという意見もある。
特別会計は一般会計の4倍ほどの規模で、442兆円もある。23年度の決算によると、12の特別会計で歳入から歳出を差し引いた剰余金の合計は、前年度に比べると、0.2兆円ほど増加し、12兆6609億円に上った。これは主に年金給付などに備えた積立金として、将来の支出に備えるために積み立てられる。あるいは今年の予算に充てるために、一般会計や特別会計に繰り入れられた。
財源は十分にある。いずれにしても、現在かなり消費は縮小したので、その拡大や経済の活性化にも寄与する政策が喫緊の課題である。減税は消費者の負担を軽減し、消費者の購買力が回復し、結果として経済全体の成長を促進する可能性が高い。
所得税の基準額を引き上げると、106万円の壁、130万円の壁と言われる健康保険料の発生がある。むろん、手取り額が増える方向で工夫をすれば、多方面に影響を及ぼす重要な経済対策と言える。