国立大学病院の経営について。

 2024年12月13日、国立大学病院長会議(大鳥会長、千葉大学医学部附属病院長)は、令和6年度第4回記者会見で、国内42の国立大学病院のうち、今年度は32病院が経常赤字に陥る見込みであると発表した。
 国立大学病院全体の経常収支は、22年度に386億円の黒字を示したが、23年度は60億円の赤字、今年度は235億円の赤字に達する見通しである。23年度の速報値によれば、全国42病院の収入は計1兆5657億円(前年度比184億円増)、費用は1兆5716億円(629億円増)で、経常損益は60億円の赤字を計上した。病院経営は民間も同様に厳しい状況にあり、「医師の働き方改革」などによる人件費の増加、光熱水費の上昇に加えて、患者数の減少が影響している。
 全国の病院は2020年から3年間、新型コロナウイルス感染症による患者の受診控えや感染予防のための診療制限の影響で、収益の低下に悩まされてきた。この間、経営努力や国と自治体の補助金、診療報酬の特例などで凌いできた。
 23年5月にコロナ感染症が感染症法上の5類に変更され、社会はコロナ前の状態に戻った。しかし、大学病院がコロナ感染症の流行期において顕著な活躍をしたわけでもなく、入院や外来の患者数は回復しなかった。
 今年4月から始まった「医師の働き方改革」による人件費の増加や、看護師などの医療職不足も深刻な課題となった。人材紹介会社への紹介手数料や委託料も経営を圧迫する要因となっている。
 経常収支悪化の主な要因として、働き方改革や処遇改善による人件費の増大が挙げられる。前年に比べ343億円も増加し、医療の高度化に伴う高額な医薬品や材料使用の増加によって121億円の医療費が増加した。
 また物価高騰などによる業務委託費の増加、老朽化が進む施設・設備への投資が64億円も増加し、エネルギー価格高騰による光熱水費の増加も33億円も上った。最も大きな支出は人件費の上昇であり、これに加えて8月の人事院勧告により、平均年収が3.4%引き上げられたこともある。
 国立大学病院は医療の高度化に対応する必要があるが、これに伴う費用増加は経営を圧迫する。高額薬剤の登場やロボット手術の技術料などは保険でカバーされるが、設備費や消耗品は病院の負担となる。また大学法人として利益を追求する立場にあり、手術数を増やし、より多くの患者を診療する必要がある。そのため診療時間が増え、人件費の増大につながる。
 大学病院は大学の付属機関として研究と教育、診療を担う教育機関で、主に医学生や看護学生の教育を担当し、研究者の専門性維持や医学研究が重要な役割を果たしている。診療は主に教官の研究者と病院の非常勤医師が行う。また学術的な診療の提供や地域医療機関への医師供給など、地域の中核的な高度医療機関としての役割もある。
 国立大学病院の経営の一端を記した。

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