日中韓首脳会議について。
2024年5月27日午前10時から1時間あまり、第9回日中韓首脳会議(日中韓サミット)が4年半ぶりにソウルで開催された。岸田首相、中国の李首相、韓国の尹(ユン)大統領にとって初めての正式な会談だった。
アジアの三大経済大国が一堂に会したこの重要な会議は、地域全体の発展と安定に大きな影響を及ぼす。人的交流の拡大、科学技術における協力、持続可能な開発の推進、公衆衛生に関する協調、経済・貿易の調整、安全保障問題など多岐にわたる議題が取り上げられた。
会談後議長国のユン大統領は「3か国の協力の基盤は相互の理解と信頼だ。そのためには頻繁に会って意思疎通を図らなければならない」と述べた。地政学的には3カ国は隣同士の国であるから、当然と言えば当然の話である。最近は少なくなったが、ご近所と言えば、昔から井戸端会議がつきもので、その中から「米国抜き」というような、こぼれ話が出てくるかもしれない。
その上で、ユン大統領は透明で予測可能な貿易投資環境の構築と、安全なサプライチェーンの確立について言及し、また環境問題などに対する協力を強調し、これらの問題には共同で対応し、経済と産業の連携を強化すると話した。
また安全保障については、北朝鮮が予告したいわゆる人工衛星の打ち上げが、明確な国連安全保障理事会の決議違反であると指摘し、国際社会が断固として対応すべきだと強調した。
会議の結果、3首脳は共同宣言を採択した。それには3か国が地域の平和と繁栄のために緊密に協力するという意思が明確に表現された。日中韓サミットと閣僚級会合を定期的に開催する点も明記され、次回の第10回はわが国で開催する予定である。
さらに共同宣言には3カ国が推進する主要分野として、1.人的交流、2.気候変動への対応などを通じた持続可能な開発、3.経済協力と貿易、4.公衆衛生と高齢化社会、5.科学技術協力とデジタルトランスフォーメーション(DX)、6.災害救援がと安全の項目が盛り込まれた。
現在は経済を中心に政治も外交も動く。第8回日中韓ビジネスサミットも日中韓サミットも合わせて開催され、日本経済団体連合会、中国国際貿易促進委員会、大韓商工会議所が主催した。ソウルの大韓商工会議所で行われ、三カ国の企業関係者など240人余りが参加した。
日韓とともに中国に対する貿易の依存度は最も高く、それぞれ約20%を占めるが、この数年間で両国ともその割合は低下している。これは米国主導の軍事的、経済的な「対中包囲網」の影響と考えられるが、今回の会談で中国はこれを打破しようと試み、日韓両国に対して過度の親米の姿勢の見直しを促す論陣を張った。
東アジア情勢の一端が窺えた。