談合について。
この数日間東京五輪大会で重要な役割を担った「電通」の談合疑惑が大きく取り上げられている。同社はわが国最大の広告代理店で、「広告界のガリバー」の異名を持ち、広告業界をはじめ、種々の業界に同社出身者が在籍し、各省庁から多くの天下りを受け入れて、大きな組織力とネットワークを保有する。
しかし、東京五輪の招致に関する汚職事件やスポンサー問題など様々な不祥事に関与し、談合はその一つである。同社は大会組織委員会に200、300人の社員を派遣し、実務を担当した彼らは業務を電通に丸投げした。電通同士が取引する構図で、汚職が発生し易いのは言うまでもないが、組織委員会は公的な組織で、官製談合と言える。
談合と言えば建設会社が代表だが、公共工事の競争入札において、競争するはずの企業同士が前もって話し合い、協定を結んで、実際には高い価格での落札や、持ち回りでの落札により、業界全体で利益を不正に分け合う。
日本社会・経済どこでも談合が蔓延っている、このようなことは世間に出ると、誰もが自ずと実感する。談合は予算の浪費となるばかりでなく、接待や贈収賄や天下りの温床となっている。また競争原理が働かないため、技術の進歩や発展を阻害し、また革新的な企業や新しい企業が現れにくく、育たない。
その一例を挙げると、日立、NEC、富士通、NTTの四社で構成するITゼネコンは、省庁から市町村までシステムを談合によって振り分けている。インフラの構築からコンピュータ機器の設置、納入後の運用に至るまでを一括受注し、実際のプログラミングやテスト作業を中小のIT企業に丸投げし、また多額な保守点検料や更新料で大きな利益を上げている。
談合によってわが国の産業とIT化は大きく遅れ、経済も衰退の一途を辿る。案の定、2006年4月日本土木工業協会は「談合はもとより様々な非公式な協力など旧来のしきたりから決別する」と談合決別宣言をした。そして、大手ゼネコン各社も談合への決別を申し合わせたうえで、透明性のある入札・契約制度に向けての業界提言を発表した。
それにも関わらず、談合は必要悪とされ、脈々と引き継がれて、現在も繰り返されている。経済活動に関わる事件として、競売入札妨害事件や談合事件も多数発生し、これらに関連した汚職事件が後を絶たない。
全国市民オンブズマン連絡会議によると、過去の談合訴訟や、公正取引委員会の審判、さらに全国落札率調査を勘案し、落札率95%以上を「談合の疑いがきわめて強い」、落札率90%以上を「談合の疑いがある」としている。まともに競争入札が行われた場合、普通予定価格に一定比率をかけて算出するが、比率は自治体ごとに異なるとしても、70~90%の間、多くの落札率は80%以下になる。
21年度の都道府県落札率を見ると、全国平均は93.8%で、大阪府は90.4%、京都府91.4%、愛知県93.9%、東京都は94.0%、島根県と山梨県97.5%であった。
世間は談合だらけである。