2類から5類へ。

 5月8日に移行するが、その後の新型コロナウイルス感染症の医療体制が議論を呼んでいる。現在、コロナ感染が疑われる場合受診できる発熱外来は、全国で約4万2千施設と言われる。
 数カ月~1年程度の移行期間を設け、内科・小児科など季節性インフルエンザを診療する約6万4千の内科と小児科を中心とするクリニックでコロナ患者を診る通常の診療体制に移行する。この間に行政は2万余の医療機関に受け入れの説得をするのだろうか。
 医療費は医師が必要と判断した検査費、入院費、コロナ診断後から療養期間終了までの治療費は公費で負担する。5類に移行後は健康保険による診療で扱われ、インフルエンザと同様に負担分を支払い、個人の感染対策も自己責任になる。
 治療薬の中には、薬価が10万円を超える薬剤がある。自己負担額が高額になった場合一定の金額を超過した分を払い戻す高額療養費で対応するのが普通でも、理由は良く分からないが、公費で負担を継続する意見もある。
 3月上旬をめどに最終的な方針をまとめるようだが、保健所を中心とする行政が担当するコロナ患者の入院調整は、5類移行後も感染拡大時のほか、重症者や妊婦などに対しては続ける方針を検討している。保健所を中心とする行政の影響力と既得権益を残そうとする意図があり、患者には関係がなくても、医療としてはやりにくい面がでる。
 入院は全国ある約2千施設の重点医療機関で主に受け入れている。移行期間を経て、さらに多くの医療機関での受け入れ体制を目指すが、仮に精神科病院(約千施設)を含む全国約8200病院が受け皿になれば、入院できる施設は現在の4倍以上となる。
 全部が新型コロナの診療ができる能力を備えているとはかぎらない。軽症のコロナ患者はクリニックが経過を診るにしても、一般に急性期のコロナ患者は、大学病院、国立病院はじめ公立病院が率先して受け入れるべきで、療養型病院や精神病院では感染対策、診療能力、人的能力など不備がある。ましてや、老人福祉施設ではお手上げである。
 オミクロン株は感染力が強い反面、死亡率や重症率は低い。その結果、人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)を装着するような重症患者はかなり少ないが、感染拡大期には患者が激増し、クリニックには大勢の患者が押しかける。
 死亡率が季節性インフルエンザと同程度まで下がると幸いであるが、残念ながらそこまでは低いという訳ではない。また感染力についてもかなり強力なオミクロン株がいまだ流行している。今後9波、10波の感染拡大は必然で、強力な変異株が出現する可能性もあり、油断はできない。
 医療機関の対応にも懸念がある。これまでは空床補填の補助金などがあったことから、コロナ専用病床を設けてベッドを確保し、治療を行ってきた。今後、各診療科で個別的に管理する体制に変わり、コロナ患者が入院できるベッドが急激に減る可能性がある。

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