米の高騰について。

 岸田政権と財務省による脱デフレ脱却と緊縮財政の旗印の下、この2年間物価の異常な高騰が続いている。とくに今夏から国産米の価格が上昇し、これまで手頃な価格で購入できた国産米が家計に大きな負担を与えて、国民からは悲鳴が上がっている。
 物価高騰の潮流として、高騰は仕方がないとする意見もある。価格が上昇した背景には、天候不良による不作や農業従事者の高齢化、後継者不足などが影響し、また輸送コストや肥料、農薬の価格も上がっていることから、米農家の経営が圧迫されているという理由が挙げられる。
 しかし、これらはもっともな理由だが、建前の理由に過ぎない。確かに物価高の一部に影響するが、消費者としては、とうてい、これほどの値上げには納得ができる訳がない。販売価格の引き上げは農家や農業を守る措置だと言われても、本当に生産者のためになっているのかどうか大きな疑問がある。
 政府は国民のために粉骨砕身の働きをする必要があり、何事も透明性のある説明や適切な対策を講じる必要がある。今回の値上げは生産者の手取りを増やしたり、経費を補填したりするものではない。農家の米の出荷価格は依然として緩やかな下げトレンドにあり、厳しい状況が続いている。
 こういった理由から、専門家の間では米価の値上げは農家を直接的に救済するものではないとの指摘がある。政府としては農業支援策を強化し、農家の負担を軽減する対策を立てて、流通経路の透明性を確保し、公正な取引が行われるよう監視する必要がある。
 今年の盆すぎから初秋にかけて、米が店頭から消える異常事態が生じた。9月中旬に新米が本格的に流通するようになり、量的な不足は解消した。しかし、驚くことに小売価格は前年と比べて6~7割も高くなり、これまで安価だった米ほど値上がり幅が大きく、約2倍になった米もある。
 生産者にも納得のいかない点が多い。値上げの利益は農業協同組合(JA)、流通業者や商社が利益を得ているのが現状である。とくにJAは農林中央金庫の今年度の最終赤字が1兆5000億円になる見通しで、全国の農協から1兆2000億円の資本増強を受けると公表した。
 一方、米の消費量は2010年には820万トンを示したが、20年には704万トンと長期的には減少の傾向にある。今回の件で和食離れに一段と拍車がかかるだろうが、家計の負担軽減を図るには、もっと早く安価な外国産米の緊急輸入を行うべきであった。
 やはり、最近一部のスーパーでは米国産や台湾産の米が並び始め、これまであまり見かけなかった外国産米が目立つようになった。発売直後から売れ行きは好調であり、品薄になっている店舗が多く、安価な外国産米を入手したいという問い合わせが増えている。
 今後、一般消費者向けに流通を継続できるかどうかは微妙で、その理由は輸入量が限られている点にある。政府は輸入できる主食用米の上限を10万トンに定めており、今年の国内の主食用米の生産量は約670万トンで、10万トンは約1.5%に過ぎない。外国産米の需要が高まる中、政府は喫緊に輸入枠を大幅に拡大し、国民の期待に応える必要がある。

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