静岡県知事選挙とリニア中央新幹線。
2024年5月26日に行われた知事選挙では、立憲民主党と国民民主党が推薦した元浜松市長の鈴木氏が初当選を果たした。これは予想もしなかった前知事の川勝氏が辞職したことに伴う選挙で、同氏は自民党推薦の元副知事の大村氏ら5人の新人候補を破った。
元々、鈴木氏はリニアの建設推進派で、この結果によって、川勝氏が静岡工区の着工を認めてこなかった県の政策は転換される見通しとなった。選挙戦では共産党の森候補がリニア中央新幹線の建設と浜岡原子力発電所の再稼働に対して反対を訴えており、かなり票が集まりそうだった。
同氏は選挙戦の終盤には県民の意向を汲んで、「現状を把握して、いろいろな課題に対応する。自然環境の保全の問題はきちんとやる」と強調し、含みを残した。それまで鈴木氏と大村市は互角の戦いを演じていたが、この発言によって勝敗が決したと言われる。
静岡県民はリニア中央新幹線に複雑な思いがある。第一に選挙中に岐阜県瑞浪市で建設工事による井戸の枯渇が発生したが、静岡県でも同様な水資源が問題とされ、20年に住民運動が起きている。水問題だけではなく、その他の環境破壊や電磁波の影響も起こり得る。さらに中央新幹線は静岡県を通過するだけで、とくに恩恵は受けない。
全国的な問題として、リニアは大量の電気を消費し、これが原子力発電所の建設の促進する可能性がある。また走行距離の90%はトンネルの中を走行し、乗客に電磁波による影響もあり得る。
建設には莫大な費用が必要で、東京大阪間の時間が現在の新幹線よりも1時間ほど短くなっても、それほどの経済効果はないとする意見が強く、建設に反対する人も多い。一方、日本列島全体の時間距離を短縮し、経済社会活動の効率性を高める効果があるが、さらに東京一極集中化を招く恐れがある。
一部に浜松市と静岡市の戦いという声もあるが、静岡県知事選による自由民主党の敗北によって、岸田政権は大きな打撃を受け、前途がますます険しくなった。自民党としては4月の衆議院の3補欠選挙(東京15区 島根1区 長崎3区)に続く大型選挙で全敗し、7月の東京都知事選挙にも影響が出そうな情勢となった。
自民党は派閥裏金事件を切っ掛けに党内での不正行為と利己的な行動を大きく露呈した。そのために逆風が吹いているが、これは表向きの問題で、国民は長年にわたる自民党政権の利権優先政治と経済低迷に嫌気が差している。
今回のリニア中央新幹線の建設をはじめ、第2東名高速道路、東日本大震災による復興事業、全国各地の再開発や都市開発、オリンピック大会、万博など大規模事業やイベントに巨額の予算を投じた。これらは税金を浪費し、一部の人に利益をもたらすだけで、大多数の国民は恩恵を受けない。
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