2024年都知事選の一考察。
7月7日に行われた東京都知事選挙は、小池都知事と蓮舫元参院議員による有力な女性政治家の一騎打ちと予想された。現職の圧倒的な勝利に終わったが、選挙戦は予想外の展開を見せた。
全国的には無名で、既存政党の支援を受けずにインターネットを活用した選挙運動を展開した石丸氏が2位に浮上し、世間を驚かせた。一方、立憲民主党と共産党から大きな支援を受けた蓮舫氏は3位の惨敗を喫した。
石丸氏の躍進は既存の政党の公認や支持がなくても、スタート時は泡沫候補でも、ネットでブレイクし、政党の組織票を上回る得票を獲得した。これによって、今後の我が国の選挙の在り方は大きく変わるだろうと言われる。
今回の選挙では歴代最多の56人が立候補し、騒擾の選挙戦になるだろうと予想されたが、大手メディアはほとんど報道しなかった。異例な事態であったが、都知事や自由民主党によるメディアへの圧力があったと推測される。
小池氏は選挙中に3件の公職選挙違反の刑事告発を受けたが、それでも、既存の利権政治を守るために各業界の応援を受けた。その他にも創価学会、旧統一教会などの宗教団体、また労働組合の集合体である連合までが小池氏を支持したことは前代未聞だった。
これらの要素が小池氏の勝利につながった可能性が高い。同氏は選挙活動中、街頭に出ることは少なく、現職に有利なバラマキ政策を展開し、公務を利用した選挙活動を繰り広げた。そのため当選しても、前述の刑事告発を含めて、失職する可能性もある。
石丸氏の躍進はSNSによる発信力だけではない。驚異的な街頭演説の回数と都民と直接コミュニケーションを取り、多くの支持を集め、また自民党や維新の影の支援などが一体となって、166万票の得票につながった点を忘れてはならない。
選挙活動の一つとしてSNSの影響力は大きい。とくに若者層の間でSNSの利用が広がっているのを考えると、その影響力は今後さらに増すと予想される。しかし、小池氏の当選を見ると、少し言い過ぎの可能性がある。また選挙活動の主戦場がテレビからインターネットに移ったというのも、浮動票を獲得するには有効な手段となるが、少し早計な考えかもしれない。
もちろん、蓮舫氏にはそれなりの人気があった。ネット活動を過小評価した嫌いはあるが、まともな政策を掲げ、既存の選挙方法を展開した蓮舫氏が3位に沈んだのは、選挙戦略が拙かったという批判が強い。しかし、一部には今回の選挙はまともではなかったと評価する向きもある。
いずれにせよ、今後、立憲民主党では執行部や都連の責任問題に発展する可能性がある。今回の選挙は利権政治や業界との癒着が明らかになり、自民党から野党への政権交代の可能性が高くなり、政治の大刷新を余儀なくされる。
蓮舫氏は当選しなかったものの、大きな業績を残した。