石破氏の首相就任。
2024年10月1日、第214回臨時国会で衆議院と参議院の両院で首班指名選挙が行われ、自由民主党の石破総裁が第102代内閣総理大臣に選出された。当日、新内閣は皇居での総理大臣の親任式と閣僚の認証式を経て、午後8時すぎ正式に発足した。
総裁選後の同氏の言動の変化は、政治的な波紋を広げた。当初は早期解散に慎重な姿勢を見せていたが、9月30日には10月15日の公示と10月27日の投開票で解散総選挙を行う意向を示した。
野党は臨時国会の会期を巡って反発し、本会議の開始が30分近く遅れるなど、新政権のスタートは波乱の船出となった。そして、新政権が成立するや否や、野党は一斉に「言動不一致」、「変節」、「手の平返し」などと誠実と信念の政治家である同氏には相応しくない批判が次々と飛び出した。
同氏は若い頃から政治改革にも熱心で、言葉や政策に自信を持っている。自民党総裁選挙ではすぐに解散しないで、国会で論戦をして、判断材料をしっかり国民に提供する形で選挙に臨むとまさに王道の政治家に相応しい発言をしていた。
それが、いきなり解散では邪道というか、ほぼ反則に近く、総理に就任する前に解散を口にすることなどルール違反である。これには当初は早期解散が公約の小泉氏が総裁になることが確実視されており、党内や官僚組織でその日程が既定路線となっていた。このことから本命の総裁候補ではなかったことが知れる。
石破氏といえば、国民の間では語りかける政治家で自民党議員らしくない発言で人気が高い。それだから国民のほうを向いて、国民からしっかり応援や指示を受ける内閣を作るとか政策を言うべきであって、党内の事情に配慮し、慣れない舌先三寸の発言をしても碌な話にはならない。
それにしても何かおかしい。これには理由があるに違いない。同氏は総理に就いた途端、側近を除いて、党内は自分が任命した幹事長はじめ四面楚歌の状態となった。とくに麻生氏の影響力を背景に高市氏を中心とする裏金議員や旧統一教会との関係者が多い安倍派議員の勢力は強く、さすがに譲歩を余儀なくされた。
さらに追い詰められたのは、ご祝儀相場の新内閣の支持率は軒並み50%前後で、歴代内閣では下から2番目の低い数値を示した。これには政治とカネの問題、景気と賃上げ対策が大きな要因である。このままでは選挙に敗退し、政権交代が待ち受けている。また党内改革、政治改革に近づく絶好な機会でもある。
そうなると、四面楚歌を打ち破り、中央突破しかない。同氏は一転、6日に裏金議員の扱いを巡り、一部に非公認、比例重複を認めないという厳しい決断を下した。そのため下村氏、西村氏、高木氏、萩生田氏など10名ほどが自民党の公認を受けられなくなる。
石破氏は反撃の一撃を放ったが、7日の衆院本会議の代表質問で、就任後初となる国会論戦に臨んだが、淡々とメモを読み上げて、「石破カラー」を封印した安全運転のデビューをした。
錯綜した政局の一端を記した。