わが国の住宅市場の一端について。

 住宅問題は賃金上昇の停滞と賃貸料を含めて住宅価格の高価格という二つの主要な課題に直面してきた。この状況は都市部と地方の双方で異なる形で表れているが、少子化による人口減少の一因と言える。
 全国の都市部、とくに東京23区では新築分譲マンションの価格が飛躍的に上昇しつつある。不動産経済研究所のデータによれば、2023年の平均価格は1億1483万円に達し、高給の共働き夫婦でも容易に手が出ない。
 この背景には土地の供給不足や建築コストの上昇、投資需要の高まりなどがあり、また住宅ローン金利の上昇も購入意欲を削ぐ要因となっている。しかし、都市部では将来的な価格上昇を見込んで物件を購入する投資家が多く、これが需要を押し上げ、価格が高騰する。
 また投資家が物件を長期間保有することで、市場に出回る物件の供給が制約され、供給不足が生じ、価格が上昇する要因となる。人気のあるエリアでは、投資家同士の競争が激しくなり、さらに金額が高騰する。
 23年の新設住宅着工戸数は81.9万戸で、前年に比べると4.6%の減少が見られた。その内訳をみると、貸家の着工件数は34.3万戸、持ち家の着工件数が22.4万
戸で、前年よりも11.4%と大幅に減少した。今後も持ち家率が低下し、賃貸住宅への依存が高まることが予想されるが、人口減少も相まって、市場の縮小が予見される。
 一方で、賃金の上昇率は物価高に追いついておらず、生活費の負担が増加している。政府は賃上げを促進する政策を打ち出しているが、企業の人件費負担や経済の不確実性から、大幅な賃金上昇は期待し難い。とくに中小企業では経営の圧迫が懸念され、賃上げの実現はなかなか難しい。
 他方、若者の都市部への流出が続き、わが国では人口の高齢化と人口減少が進行している。この結果、空き家や空室が増加し、土地や住宅の価値が低下する。地方経済の衰退が加速し、地域間の格差がさらに拡大する。
 空き家や更地の増加は防犯や景観の問題も引き起こし、地域社会全体に悪影響を及ぼす。若者が地方に定着できるよう、魅力的な雇用機会の創出やインフラ整備を進める必要がある。
 今後は変動型ローン金利の上昇が予想されるため、住宅購入を検討する人々にとってはさらに厳しい状況が続く。賃金と不動産価格の動向は経済全体と密接に関連しており、今後の政策がこれらの課題をどのように解決するかが注目される。とくに物価高と人口減少という二つの大きな問題に対して、効果的な対策が求められている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?