裏金を巡る課題。

 「政治とカネ」の問題は1980年代から90年代にかけて、社会的な焦点となった。とくにリクルート事件(88年)と東京佐川急便事件(92年)は企業や団体からの献金による不正を明らかにし、政治の信頼性を大きく損なった。
 前者はリクルートの関連会社で、未上場の不動産会社リクルートコスモスの未公開株が賄賂として譲渡された。贈賄側のリクルート関係者と、収賄側の政治家や官僚らが逮捕された。
 後者は東京佐川急便の渡辺社長から自民党竹下派会長の金丸自民党副総裁に、選挙の際の献金として5億円が提供され、また新潟県知事にも現金が渡っている問題が発覚した。これに対して検察批判と金丸氏の政治責任を求める声が強まり、金丸氏は議員を辞職した。 当然、こういった問題は企業や団体からの献金が政治家の決定に影響を与え、政治の透明性と公正性に対する疑念が生じた。そのため企業・団体献金を制限し、94年にその代わりに政党交付金が導入された。
 政党交付金は国が政党の活動を支援するために提供する資金で、政党は国民の税金を受け取って運営されることになった。新しい制度に対して、自由民主党は国民の税金を受け取る政党の責任を法的に明確にすることが必要だと主張し、政党法の制定を求めた。
 しかし、社会党や共産党は、この法案が結社の自由や政治活動の自由の侵害につながる恐れがあると反対した。その結果、「政党法人格付与法」が制定され、政党交付金を受ける政党には法人格の取得を義務付けた。
 現在、再び裏金問題が表面化しているが、この問題を考えるには歴史的背景を振り返るのも必要である。今回は自民党の5派閥が政治資金パーティーを巡って、政治資金収支報告書への過少または不記載をし、各派閥が所属議員に販売ノルマを超過して集めた収入を「裏金」として、キックバックを組織的に続けてきた。
 1948年に議員立法で作られた政治資金規正法は、政治とカネを巡る問題のたびに政治家らの手で改正が重ねられ、とくに企業と団体献金は厳しく制限されてきた。しかし、利権政治の根源である裏金事件は後を絶たない。
 国民の不信感や怒りが極度に高まっている。今回の改革はわが国の政治に大きな変化を与える可能性が高い。それにもかかわらず、裏金作りの張本人である自民党は、その自覚が乏しく、政治資金規正法を自らの都合に合わせて改正し、曖昧に済まそうとしている。むろん、野党からは自民党案では改善されないとの批判が強い。
 自民党以外の各党の政治改革案も出揃ったようだ。これらの改革案には会計責任者だけでなく、議員にも連帯責任を負わせる「連座制」の導入が含まれている。こういった改革が実施されれば、裏金問題に対する対策が大きく進む。それには自民党自身が実行できるかが重要となる。
 そのためには自民党が自身の行動を深く反省し、真剣に改革に取り組む必要がある。それができなければ、裏金問題は解決せず、政治の信頼性はさらに損なわれる。この問題を解決するには全ての政党が協力し、透明性と公正性を確保する。
 それが真の政治改革と言える。

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