医師の偏在についての論点。

 2024年11月13日、財務省は財政制度等審議会財政制度分科会(分科会長:十倉・住友化学代表取締役会長 日本経済団体連合会会長)に提出した資料で、医師数の適正化および偏在対策について意見を発表した。
 これまでに決定された内容には、自由開業や自由標榜の見直し、医学部定員の適正化、外来医師多数区域での保険医新規参入の制限がある。今回の会議では、新しく特定地域で特定診療科の医療サービスが過剰と判断される場合、「特定過剰サービス」として保険点数を減算する提案が行われた。
 医学部の入学定員については、2030年頃に医師の供給過剰が予測されるため、人口減少に対応した適正化が求められている。2027年以降、本格的に定員の適正化が行われる予定である。
 現在の入学定員は約9400人で、毎年約4000人の医師が増えている。需要と供給のバランスを取るため、各医学部の定員を100名から50名程度に削減するか、全国の医学部を半減する必要があるが、これは容易ではない。
 実際には今世紀に入り医師数は充足し、2022年12月末の医師数は343000人に達し、人口10万人あたり275人の医師がいる。このため、以前は産業医や保健所、行政機関、近年は美容皮膚科や美容外科、抗加齢医学などの美容医療分野に流れる若手医師が増えている。
 すでに医師数は充足しているが、10年以上前から地域や診療科、病院と診療所の偏在が課題となっており、これらの改善が重要視される。偏在の改善のため、まず医師確保計画の深化が進められる。
 具体的な対策としては、医学部入学時の地域枠の活用、大学病院からの医師派遣、総合診療能力を有する医師の育成、生涯教育の実施、経済的な報酬による偏在の是正、医師少数区域での勤務経験を求める管理者要件の拡大などが考えられている。
 政府は地域ごとの医療サービスの均等化を図り、不足する地域には必要な医師を確保する目標を掲げる。これにより、都市部と地方の医師偏在や医療格差を解消し、全国どこでも質の高い医療が受けられる環境が整備されることが期待されている。
 医師の適正な配置と定数の管理は、患者および医療提供者にとって健全な医療環境を維持するために不可欠であり、各地域の医療需要や特性を考慮し、適切な医療人材の確保と育成が求められる。このシステムの構築は医療体制の持続可能性を確保し、地域医療の質向上に極めて重要である。
 さらに適正な配置により医療機関の負担軽減と効率的な運営が可能となり、医療サービスの質向上も期待できる。これらの取り組みは医療体制を持続可能なものとし、未来にわたって健全な医療環境を維持するための重要な課題である。
 この5~6年でどこまで実現するかが注目される。

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