真実はどうなるのだろうか。
木原・官房副長官の妻(X子氏)が関係する不審死事件について、警察は覚醒剤乱用による自殺と断定したが、その真相は疑わしい。2023年7月初旬から「週間文春」は他殺の可能性を示唆する衝撃的な記事を連載し、音声データや遺族の証言も公開した。
「文春」は警視庁捜査員の音声データや遺族が捜査不十分として捜査続行を求める上申書を提出したこと、木原氏本人と妻の取調官の実名告発や前夫の死など信じがたい事実を次々と明らかにした。このような重大な事件であるにもかかわらず、大手の新聞やテレビは間接的に触れても、直接的には報道しない。
X子氏の前夫である安田種雄氏の父親が司法記者クラブで会見を開き、また木原氏本人と妻であるX子氏の事情聴取を行った元捜査一課の佐藤氏が文藝春秋社で会見を開いたが、大手メディアはほとんど無視するか小さく扱うにとどまっている。
本件はインターネットでは既に大きな話題となっており、フリーのジャーナリストを中心に議論が交わされている。しかし、大手の新聞とテレビは文春の記事の一部を横流しするか、政府や捜査当局の発表を待って追随する報道をするにすぎない。そのため現在大手メディアが扱わない「木原問題」は、十分に広まっていないのが現状であると言える。
なぜ大マスコミは報道しないのか。官房副長官は政権の要職であり、その影響力を使って事件を隠蔽したという疑惑も浮上している。これだけでも本件には公益性があるのだが、報道されない背景には何があるのだろうか。その最も大きな理由として、この不審死事件は木原氏には直接関係がなく、事件化しない可能性が高い点が挙げられる。
警視庁は06年4月の種雄氏の死亡について覚醒剤乱用による自殺と結論付けた。これにはX子氏の父親が公安警察の関係者であり、その影響で忖度や隠蔽が行われた可能性が指摘されている。
それから12年後の18年再捜査が始まったが、捜査は進展したものの、すぐに縮小された。捜査が佳境に入った頃、この間に政界で活躍していた木原氏は、自由民主党の情報調査局長に就任した。木原氏が捜査の縮小に関与したのではないかという疑惑がある。今回の一連の文春報道を受けて、警視庁の国府田・捜査一課長は7月28日本件の死因は自殺と考えて矛盾はないと発言した。
大手のマスコミ各社は警察・検察・国税などの捜査機関に設置されている記者クラブを拠点に、当局と連携して事件を取材する。事件化しなければ記事にしないという姿勢が記者には染み付いており、課長発言の前には露木・警察庁長官が定例会見で事件性はないという趣旨の発言をした。
現状では他殺説の疑念が永久に残る。このままで建前は別にして、本件の真相を追求する課題は、自殺か他殺を明確にするだけではなく、警察の信頼回復に関する問題でもある。文春の報道は社会に新しい光を提供するものであり、大手マスコミも積極的に取り上げるべきである。
事件解明への期待が高まっている。