騒然たる世情。
昨今のわが国は新型コロナウイルス禍、ロシアのウクライナへの軍事侵攻、物価の高騰で窮地に陥っていた。そこへ7月8日の安倍銃撃事件を契機に統一教会問題、国葬問題、東京五輪疑惑、感染対策の変更などが急速に浮上し、世情は大きく揺れ動いた。8月24日岸田首相が原子力発電所の新増設の構想を打ち出し、ただならぬ気配になった。
内閣支持率の急落もあって、8月10日に首相は起死回生の思いで、大方の予想よりも前倒をし、内閣改造を断行した。ところが任命した大臣、副大臣、政務官、党役員に統一教会と関係のあった者が続出し、メディアは蜂の巣をつついたような報道で、かえって火に油を注ぐ結果になった。
今月20、21日に毎日新聞と社会調査研究センターが行った世論調査によると、内閣支持率は36%で、前回の7月の調査に比べると16%も急落した。昨年10月の内閣発足以来最低で、不支持率は54%と17%も増えている。内閣改造・党役員人事についても、評価するは19%で、評価しないが68%と圧倒的に多い。
岸田氏の拙劣な政策と無定見が露呈し、国民の多くは先の参議院選挙できちんとした選択ができなかった、自民党は約束違反ではないか、だまされたなどという反省が頻りになった。
そこへ首相は来年夏以降に全国7基の原発の再稼働を目指す方針を示し、電力需給の緩和を図る考えを公表した。また温室効果ガスの排出削減を理由に原発の新増設や建て替えなどについても検討の加速を指示した。
建前は良いとしても、原発の廃止は世界の潮流で、世界平和の象徴でもある。政府は福島第一原発事故以降原発の新増設などについて、想定していないとしてきたが、ここにきて方針を大きく転換した。
電気代が高騰し、国民がエネルギー供給への不安を抱えている現在なら、原発推進を打ち出しても理解が得られるとの読みがあったようだが、岸田氏は広島県出身だけにこの程度の考えでは、とうてい国民の信頼は確保できない。当然、わが国では核兵器や原発に反対する人が多く、支持率の低下に拍車をかけるにすぎない。
安倍銃撃事件の直後に内閣支持率は一時上がり、選挙は大勝した。その後容疑者が高額な献金による家庭破綻の犯行動機を明らかにすると、一挙に国民の関心が統一教会に集まり、国葬を行う正統性が大きな問題になった。世論などどうでも良いと思っている政府と与党には今後の政局の運営は難しくなりそうだ。