医師の働き方改革について。

 2024年から始まる働き方改革法は、年間の労働時間を1680時間に制限し、それを超える場合は割増賃金を払うことが必要になる。実際の施行の時期は多少異なっても、医療や介護、飲食、宿泊、物流、研究などの職種で働く人々は影響を受ける。これらの職種では長時間労働が当たり前だが、医師や研究者の仕事は勤務時間が不明確な部分がある。また需要や忙しさによって労働時間が変動し、人材や技術の不足も問題になる。
 物流ではトラックドライバーの長時間勤務が規制され、物流が滞る恐れがあり、解決に向けて懸命な努力が行なわれている。機械化や効率化が検討されており、ドライバーの労働時間を減らそうとする。医療の場合も人工知能などの導入で、一部は改善できる可能性があるが、現状では他の職種と同様に医師の増員や勤務体制の見直しが必要となる。
 といっても、働き方改革は長時間労働や過重労働を減らし、労働の質と安全を高め、職場環境を向上する。自分自身や患者だけでなく、社会全体のためにもなる重要な問題である。睡眠不足や疲労は、作業能力の低下や医療ミスの増加につながり、仕事と家庭のバランスが崩れる場合もある。
 わが国は人口減少が進んでも、35万人もいる医師は過剰だと言われている。しかし、実際には医師の専門化や分業化や偏在などの問題もあり、労働時間は他の職種よりも長い。この理由は高額な給料、多様な業務、特殊な勤務体系などにある。このように医師の業務は複雑で難しい。増員は人件費や教育や資格などの問題から簡単ではない。このような状況で、働き方改革そのものに反対する医師や関係者もいる。
 一部の企業では労働時間をごまかすために勤務表を改ざんしたり、休憩時間を削ったりする不正行為が行われている。これらに加えて、医師の場合は医務室や医局での仕事は勤務に含めない場合もある。
 管理監督下での仕事は労働だが、それ以外の仕事は労働時間に含めず、患者への説明や意見書や入院診療記録などの書類作成や研修時間などは勤務とみなさない。宿・日直や呼出当番などで夜間の仕事や超過勤務が発生する。宿直の次の日に日勤に入る場合もあり、疲れ切った医師が診察にあたるのは望ましくない。
 わが国の労働者は給料が低く、仕事の負担が重いという現状に直面している。労働者の負担を軽減するためには、人手を増やすのが必要である。しかし、人件費の増加を懸念する声が高い。
 いったい経済はどうなっているのだろうか。

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