権力と沈黙の代償。
兵庫県の斎藤知事に関する一連の疑惑は、深刻な社会問題を浮き彫りにした。公益通報者保護法の適用を巡る問題、メディアの報道姿勢、そして公務員の労働環境、組織の隠蔽体質など、多岐にわたる問題が絡み合っている。
県議会の調査特別委員会(百条委員会)は8月23日、全職員を対象に行った知事疑惑に関するアンケートの中間結果を公表し、パワハラを見聞きしたとする職員の割合が38%に上ったと公表した。この結果は知事に対する職員の信頼の欠如を示唆しており、組織内の緊張と不信感を反映している。
2024年3月12日付けで、西播磨県民局長の渡瀬氏(60歳)はこれらの問題についての告発文書を報道各社や一部の県議会議員に匿名で送付し、斉藤氏の振る舞いを明らかにした。
同月27日に斉藤氏は3月末で定年退職予定だった渡瀬氏の告発を、調査もなしに嘘八百」と断じて解任した。降格された同氏は4月に入って県の公益通報窓口に、同一の内容を送付したが、公益通報者保護法によって保護しなかった。
7月7日夜、渡瀬氏の家族から警察に行方不明届が出された。県警が行方を捜索したところ、姫路市の親族宅で亡くなっているのが見つかり、捜索の結果、同氏は姫路市の親族宅で亡くなっているのが見つかり、関係者の氏名や内容が漏れることを恐れた自殺と判断された。同氏の告発文は斉藤氏と県に対する遺書となった。
兵庫県庁は想像を絶する隠蔽工作を行い、表向きは2人の犠牲者だが、実は3人目の死者が出ていた。その一人は元総務課長で、告発書によると、不正行為と調整のストレスでうつ病を発症し、最終的に4月に自殺した。
もう一人はわが国の知性と言われた五百籏頭氏のことだが、3月6日午後、自身が理事長を務める「ひょうご震災記念21世紀研究機構」(人と防災未来センター内)で執務中に、息苦しさなどを訴えて神戸市内の病院に搬送された。同日急性大動脈解離のため死去した。
渡瀬氏の告発文によると、同氏が急逝した前日、斎藤知事の命を受けた副知事が自宅を訪れ、機構の副理事長2人の解任を一方的に通告した。同氏はこの人事に驚いた様子で、直接的な因果関係は説明できないが、このストレスが大動脈の解離を発生させた可能性もある。
勇気を持ってアンケートに県職員に感動したという声もあり、役人は腐った者ばかりではなく、自浄能力があるとの意見もあった。しかし、分かっていながら、少なくとも2人の命が失われた後では、行動が遅すぎる。