トランプ氏の勝因とメディア。

 世界が注目した米国の大統領選挙2024では、トランプ前大統領(78歳)が歴史的なカムバックを果たした。多くの要因があったが、主な原因は国民の間で鬱積していた経済の低迷や格差に対する不満の結果である。
 事情は異なるが、この問題はわが国で10月に行われた衆議院議員選挙で与党が大敗した理由と根本は同じである。副大統領のハリス氏と民主党は、こういった素朴な世論に目を向けず、高学歴都市住民を相手にして、世論からそっぽを向かれた。
 CNNテレビ、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ロサンゼルスタイムズなどの有力メディアは民主党が強い大都市ばかりに取材が偏っていた。わが国でもNHKをはじめ大手メディアや評論家は大接戦の報道を流し続け、むしろハリス氏が優勢の印象を与えて、大統領選を盛り上げた。
 これでは真実や本質が分からなくて当然で、現在の報道姿勢では日米関係や国際情勢は見通せない。共和党のトランプ氏は世論調査に基づくハリス氏優勢の予想を大きく覆した。同氏は50%の得票率を確保し、312人の選挙人を確保し、ハリス氏に大勝した。
 しかし、一部の評論家や見識者は同氏の優勢を見越していた。メディアの偏向報道や隠蔽報道は国民にいかに誤解を与え、ミスリードを導くかは指摘されているところで、今回もそれが良く分かった。
CBS放送の出口調査によると、有権者の3分の2が経済状態の悪化を投票の動機として挙げており、45%の人が4年前に比べて暮らしむきが悪くなったと感じていた。
 どの国の国民も経済が最大の関心事であり、トランプ氏はこれに強いメッセージを発信し、強くアピールした。多くの人がバイデン政権下での経済政策に不満を抱いており、同氏の経済政策に期待をした結果と言える。
 その他の勝因として、軍産複合体やウォール街の金融界を背景にするクリントン夫妻、オバマ氏、バイデン氏などの民主党エリートは国民から遊離し、むしろトランプ共和党が労働者の味方になっていたことも大きな勝因だった。
 また移民の流入問題も争点で、トランプ氏は移民流入を厳しく取り締まり、国内の労働者を守る政策を掲げた。女性候補であるハリス副大統領に対する抵抗感も一部の有権者に影響を与えた。とくに保守的な地域では、女性候補に対する偏見が根強くあった。同氏の選挙演説中に暗殺未遂事件が起きたこともあり、治安の悪化も国民の懸念材料となったが、治安維持を強調し、法と秩序を重視する姿勢を示した。
 それ以外にもトランプ氏の戦争嫌いは有名である。戦争の中止と平和は、現在の大きな国際世論でもある。米国国民の多くが戦争や紛争などを望む理由はない。ウクライナとイスラエルの支援や、海外の派遣の軍隊の節減や削減ができれば、国民の生活は豊かになると考える人も多い。
 これがトランプ氏の勝利の最大の理由となったかもしれない。

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