自民党総裁選の現状。
長年、最も首相に近いと言われてきた自由民主党の衆議院議員(当選回数12回)の石破氏(67歳)は、今回で5回目の総裁選挙の挑戦となる。彼は国民の人気があり、メディアでも総裁に最も相応しい候補者として扱われてきた。
共同通信社が7月に実施した世論調査によると、次期総裁に相応しい人物として石破氏は28.4%で、断然トップだった。2位は小泉氏の12.7%、3位は高市氏の10.4%で他を圧倒した。同社の8月17〜19日の全国緊急電話世論調査によると、総裁選に関し、自民支持層で見ると、小泉氏が首位で24.2%、続いて石破氏21.0%、河野氏11.2%を示した。
このどんでん返しの報道に驚くが、小泉氏は父親の小泉元首相の党内での影響が大きく、また推薦人として長老の元森首相、菅前首相の支援が大きく、場合によっては麻生氏も加わると言われている。今回の総裁選は最終的には7、8人の争いになるが、模様が大きく変わって、40代の小泉氏と小林氏あるいは泉氏と石破氏いの決戦投票で、最終的には小泉氏が勝利する筋書きとなっている。
これまで15年間に4回も石破氏が総裁選に敗れたのは、党内派閥の論理が大きく作用してきた理由にあるが、現在は表向き派閥は解消された。私利私欲で政治家をやっている議員の間では、「義理人情が薄い」という理由で、人気がない。
一方、理想に燃える若い政治家からは人気があり、同僚から人望が薄いことは国民にとって不利益ではない。政治家として見るなら、若くして幹事長、防衛長官、防衛大臣、農林水産大臣、地方創生大臣などを歴任し、とうに首相の責任を果たし、今頃は悠々自適の立場でもおかしくない。
同氏は安倍元首相と麻生氏に嫌われ、彼の信条でもある「勇気と真心をもって真実を語る」としばしば発言する。これは多くの人が理想とするところではあるが、一般社会でも通用しがたく、とくに長老支配の党内では禁句である。安倍政権では異を唱え続けてきた。他から見れば箴言あるいは他山の石の類いでも、自分では党の悪口を言うから党内では嫌われると自嘲気味に言うが、他の議員はもっと聞く耳を持つ必要がある。
現在の自民党は政党であっても、政治を行う必要はない。昨今の政治の仕組みとして、必要な課題は業界や企業が案件を担当省庁へ提出し、課長補佐レベルの業界との話し合いで、法律の原案が作成される。与党の国会議員はその原案に頷くだけが仕事で、他は自分の選挙区にいかにたくさん公共事業を取り込むである。
そのために安倍氏、菅氏、岸田氏などは政治の能力があると思われないが、誰が総理大臣になっても大臣になっても、期間の長短はあっても、政権は適当に運営される。トップは変わっても、自民党の体質は変わらない。
それでも、石破氏に期待したい。