『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』(以下『リョーマ!』)は、かつて一世を風靡してテニスブームを巻き起こした漫画『テニスの王子様』の劇場作品だ。 感想を一言でいえば……神。 ゴールデンボンバーの歌広場淳さん、日本を代表するアニメーション作家である新海誠さんといった著名人も絶賛する本作品は、ミュージカル映画……あるいは、エンターテインメント作品として完成されたコンテンツになっている。正統派の後日談でありながら『テニスの王子様』を
2021年7月9日、ミュージカル『テニスの王子様』(以下、テニミュ)の4thシーズンが開幕した。 Twitterを検索すれば感想は賛否両論、悲喜交交。まだ観ていない方々は戸惑いを感じるかも知れない。 「結局、テニミュ4thは面白いの?」 この問いに、私は迷いなく「面白いですよ!」と答える。 原作「テニスの王子様」を丁寧に追い、青春学園の三年生や二年生、不動峰や他の対戦校の物語もしっかり拾っていくところが素晴らしい。越前リョーマを主役にしながらも周囲の物語をしっかりと描く
6年間に渡って上演されたミュージカル『テニスの王子様』(以下:テニミュ)3rdシーズンを最後に託されて走り切り、「Dream Stream」で卒業した10代目青学。全国優勝を納得させられる力強さが印象的だった彼らが、最後に残して行ったものについて私なりに書きたい。 10代目青学は「全国大会 青学VS氷帝」で本公演デビューして「レディ・スタート・ダッシュ!」を最初に歌っている。緊迫感の強いライブ向きではなさそうな曲だが、「テニミュ大運動会2019」でも歌われていないので選
2016年7月21日、木曜日。曜日までしっかりと覚えているほど、私にとって忘れられない大切な日。 その日、私は先輩とテニミュことミュージカル「テニスの王子様」を観に行きました。東京ドームシティホール第2バルコニー3列目センターという、とても観やすい席でした。 私のテニミュ観劇はこの日が初めて。小さい頃に影響されてテニスを始めたほど原作は好きでしたが、テニミュがきっかけで原作とはそぐわないイメージがついてしまったキャラクターがいたことが悲しく、長年2.5次元ミュージカルへの忌
怖い。 それが一番の感想でした。現代日本を舞台に、政治と報道の暗部に鋭く切り込んで話題になっている本作には「このディストピアは自分の生きている国なのか」という疑念と恐怖を強く呼び起こされます。 誤報の汚名を着せられて命を絶ったジャーナリストの父をもつ新聞記者・吉岡(シム・ウンギョンさん)と、敬愛する先輩を政府の陰謀によって失った内閣情報調査室に勤める男・杉原(松坂桃李さん)が自分たちの命をかけて真実を白日の下にさらそうと画策するサスペンス・ストーリーに、始終自分の心臓の鼓動
完璧な人生なんてない。 それは分かっているけど、誰かの上には立っていたい。だからどこかで他人を見下して生きているし、他人に見下されないように自分を偽って生きている。自分が軽んじられたら、腹が立って拗ねたりもする。本当は胸を張って生きたいから、明日が来るのが憂鬱で仕方ない。 そんな誰もが共感できる劣等感を、“東大卒のフリーター”という世間に後ろ指さされる肩書きに苦しむ主人公・和彦(皆川暢二さん)に乗せて描く愛すべきヒューマンドラマが、映画『メランコリック』です。 胸を張れな
小学生の時、幼馴染が交通事故で亡くなりました。ピアノ教室の帰りに車通りの多い道路で迎えに来たお母さんの車を見つけて飛び出したのだと、後になって聞きました。 学年全員で参加した葬儀では焼香を待つ間ずっと彼の好きだった坂本龍一さんの曲が流れていました。それを聴きながら、最近は全然話してなかったな…とか、小さい頃に2人で砂場の砂を全部掘り返してプールにしようとして怒られたな…とか、夏休みのお昼に彼の家でそうめんをご馳走になったな…とか、いつの間にあだ名でなくて苗字で呼ぶようになっ
私は劇作家である鴻上尚史さんのファンです。 観劇して感動を覚えたのは鴻上さんの「グローブ・ジャングル」が初めてで、それ以来は公演があればなるべく足を運んでいます。観劇が趣味になったのもそれがきっかけです。今年転職して自分を見直そう、と決めたのも2018年の「ローリング・ソング」を観たからでした。それ以外の観劇した作品や過去の戯曲や著書にも、何度も励まされて来ました。 先日、鴻上さんが「(傾斜のキツい劇場や2、3階席以外で)前のめりで観劇するのは何故ダメなのか」とツイッター
友人と飲み屋で近況を話していた、ある日。 彼は最近サウナにハマっているそうで、サウナでいかに身体が「ととのう」かの過程が重要という話を聞いていました。サウナ好きにしか通じないであろう「ととのう」という表現が面白いなーと相槌を打っていたとき、「そういえば」と言って勧められたのが、2016年に公開された映画『湯を沸かすほどの熱い愛』でした。 「サウナが出てくる映画だと騙されて観てみたら4回泣いた」という彼の言葉を聞いて、ひさしぶりの休日にレンタルDVDを借りて家で観ました。私
ザックザックと、黒い地面を踏みしめる度に独特な音が響く。火山岩の1種であるスコリアという穴がたくさん空いた石粒は、踏まれると小気味いい音を立てる。 周囲には誰もいない。誰もいないどころか道らしき道もない下り坂を、私はザックザックとひたすら前に進んでいった。 等間隔に並ぶ杭がどうやら進路を表しているようだった。最初の辺りでは杭の間にロープが張ってあったのに、歩みを進めるうちにそれさえもなくなってしまった。 地面が黒いことも手伝って異界にでも迷い込んでしまった気分になっていた
「私が自分の話をすることで、ひとりでも多くの人々が勇気を持って自分の人生を振り返られることを望んでいるわ。 」 — ジャネット・ウォールズ(原作) (引用:映画『ガラスの城の約束』公式サイト) 公式サイトのトップページをスクロールしていくと、一番下に原作者からのメッセージが現れます。彼女がいかに勇気があり、愛情深く、そして美しい人か、この映画から知った私はこの言葉にとても励まされました。 ひとつの傷もない人生を送っている人なんて早々おらず、大きな傷を家族から負わされた人
私は、かわいいものが大好きです。 小さい頃に野山を駆け回っていた私には「女の子らしい」という言葉は呪いのようでしたが、それと同時に「かわいい」ことへの憧れは強くありました。 背が高めで大人びた顔つきの私は「かわいい」ものが似合う時期が短く、その頃には近所の男の子のお下がりばかりを着ていました。母が散髪に失敗してショートヘアしたせいで男の子に間違われていたこともある私は、自分で服を選べるようになってからも「かわいい」格好をする勇気が持てませんでした。 自分にはないものだから、
春、仕事を辞めた私は疲れ切っていた。 今まで体験したことのない疲れで、この先1ヶ月半もある有休消化期間でも癒される気がしないほど、寝ても寝ても眠かった。このままではダメだと思うのに、まったくやる気が出ない……。 途方に暮れてベッドに転がりながらスマートフォンを弄っていると、好きな俳優がTwitterで「伊豆大島へ行った」とツイートをしていた。後日その様子を撮影したDVDが発売されるという嬉しい知らせに、ようやくベッドから身を起こす気力が湧いた。 起き上がると見える窓の外では
ファンが俳優相手に「顔がいい」という言葉を使うのを目にしたり、耳にしたりすることがあります。その度に言われた側が嫌な気持ちになっていないか、私は心配になります。 まず、誤解がないように前置きをします。私は絶世の美女では勿論ないし、芸能人になれるような華もありません。自分ではせいぜい整っている程度だと思っています。 それでも、物心ついた頃から「美人」と言われて生きてきました。それが当たり前だったので嬉しいという気持ちを抱くことなく成長し、そのうち容姿を褒められることが怖くなっ
最近、テレビでも見かけるようになった若手俳優の阿久津仁愛(あくつにちか)さん。テレビドラマ『俺のスカート、どこ行った?』にも出演しています。 甘いルックスにハジける笑顔が素敵で、テレビでもよく映えていますよね。まだ知らないという方には、ぜひこの機会に知って頂きたいです! こちらのMVに8秒目から登場している少年が阿久津さんです。唇の上にペンを乗せているのが可愛いので必見! ミュージカル「テニスの王子様」(テニミュ)で座長を務める阿久津さんを、2016年のデビューからやや遠
テレビドラマ『俺のスカート、どこ行った?』はKing & Princeの永瀬廉さんをはじめとした、注目の若手俳優が多数出演していることで話題になっています。 また一方で、主人公がゲイで女装家である原田のぶお(演:古田新太さん)という強烈なインパクトを持った作品でもあります。のぶおが黒板にデカデカと「LGBT」と書く衝撃の第1話から始まった本作ですが、セクシャリティの扱いに違和感を覚えた方も多いのではないでしょうか? 今回は私自身が感じた違和感と、それでも見続けて気づいたの