博士課程学生の待遇

1日のんびり過ごしていて、ふと気になって神戸大学のHPをのぞきました。
自分が所属する大学のHPを見る目的は、だいたい「論文出てっかなー」くらいなものです。
で、HPを訪れると必ず見るのが「授業料減免制度と奨学金制度」のページ
なんにせよ死活問題ですから、このページは学部生時代から常に見続けていて、もう習慣化してしまっています。
今日も一通り論文や受賞などのプレスリリースを眺めたあと、自動的に授業料免除ページに進むと、来学期(2020年度前期)の授業料免除についてのお知らせが出ていました。

授業料減免制度

そもそも大学進学時に
「好きなことしていいから、お金は自分で工面しなさいね」
と通達された私ですので、これまでも授業料免除制度には大変お世話になってきました。

衝撃が走ったのは2019年7月26日。
カナダはサスカトゥーンでの学会参加中でのことでした。

高等教育の修学支援新制度の詳細が明らかになり、Q&Aに下記の内容が盛り込まれていました。

Q67 大学院生は新制度の支援対象になりますか。
A67 大学院生は対象になりません。(大学院への進学は18歳人口の5.5%に留まっており、短期大学や2年制の専門学校を卒業した者では20歳以上で就労し、一定の稼得能力がある者がいることを踏まえれば、こうした者とのバランスを考える必要があること等の理由から、このような取扱いをしているものです。)

はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?
って叫んだ記憶があります。サスカトゥーンのホテルの一室で。

括弧書きの中身の論理が全く理解できなかった。今でも理解不能ですが。

7月26日といえば、神戸大の場合、農学研究科修士課程への出願、博士課程への出願は終わっています。出願者の中には、授業料免除制度がなかったら出願してなかった学生もいるはずです。私もそうでした。だから単純に「詐欺やん」って思った。

それから「各大学が設定する授業料減免制度を継続するか否かは各大学に任せる」的なアナウンスがあり、そのあと幾度となく大学のHPをみましたが

「大学院生対象の授業料免除制度については文部科学省で協議が進められています。結果が出たらお知らせします」

と書いてあるだけ。
2020年度の授業料をどうするのか。
物価の高いスイスに留学中であることもあって、やきもきした日々を過ごしていました。

アンケート

先々週くらいにアンケート回答のお願いがきました。
文部科学省が実施したものらしく、昨年度(2018年度)に博士課程に在学していた人を対象とした所得やアルバイトの頻度、授業料免除申請の有無に関するものでした。

これにはすぐさま返答を返したんですが、事務からは「受け取りました」の連絡すらなかった。
なんなら問い合わせた学振採用手続きの方法についても返事がこなかった。

神戸大学の博士課程学生への対応方針を改めて見せつけられたようで、かなり幻滅しましたし、つまりは大学院生の授業料無償化はうやむやのままになくなってしまうんだろうな、と感じていました。

2020年度の授業料免除制度

掲載されたのは1月22日でした。ここんとこばたついてたので、大学広報のTwitterもちゃんとフォローできてなかったんですよね。

曰く

本学の学生(対象は正規生のみです。ただし、国費外国人留学生、政府派遣留学生は対象外です。)で次のいずれかに該当する者とします。

経済的理由により、授業料納付が困難であり、かつ学業成績が優秀と認められる者
授業料の納期前6ヶ月以内(新入学者の入学した日に属する期分に係る免除の場合は、入学前1年以内)に、本人の主たる家計支持者が死亡し、または本人もしくは主たる家計支持者が風水害等の災害を受けたことにより、授業料の納付が著しく困難であると認められる者

ただし、学部学生及び乗船実習科の学生で申請の対象となる者は、次のいずれかに該当する者とします。
2019年度前期または後期の神戸大学授業料免除において、全額免除または半額免除の支援を受けた学生で、新制度への申請を行った者(行う者)
2019年度前期または後期の神戸大学授業料免除において、全額免除または半額免除の支援を受けた学生で、新制度の支援対象者とならないことが明らかである者(3浪以上の者、学士編入の者(医学科等)、留学生、乗船実習科生、新制度で支援を受けられる所得要件を上回ることが明らかなため新制度への申請を行うことができない者 等)

また、次の者については選考の対象外となります。
特別な理由なく同一の学年に留まっている者
特別な理由なく在籍期間が標準修業年限を超えて在学している者
※特別な理由により標準修業年限超過の場合は、一年間に限り申請を認めることがあるので、必ず事前に問い合わせてください。
申請書類の提出後、大学から別途求められた書類を指定された期限までに提出しなかった者
既に当該年度または当該期分の授業料を納付した者
当該期の一部期間を休学する予定の者
新制度対象の学部学生で、新制度の申請を行わなかった者

とのこと。

大学院生も申請できるようです。よかった。。。
通るかどうかはともかく、制度そのもののあるなしの違いは大きい
スイスからの申請で手続きは煩雑になるだろうとは思いますが、頑張って申請します。
にしてもアナウンス1/22で、資料配布が1/30で、締め切り2月末って...
アナウンス遅すぎるだろ...

大学院生、博士課程学生の待遇改善を切に願う

今回、神戸大学がこれまでの(と同じかどうかはわからないけれど)授業料減免制度を(一応は)継続することを表明してくれたことは、一博士課程学生としてかなりありがたかったです。

ただ、世界各国に比べると、日本の博士課程学生の待遇は悪すぎる。

国際学会に参加したり、スイスにきたりして、博士課程学生やポスドクと話すと、大抵各国の博士課程進学の人数の話になって、そこから博士課程給料とか授業料とかの話になります。

博士課程の学生にお給料が出ない国は日本だけなんです。

日本の博士課程では給料をもらえない
なんなら授業料を支払わないといけない

というと、

クレイジーだ
そら誰も博士課程なんて行かないよ
就職の門戸も狭いって聞いたよ
君は本当にクレイジーだね

と言われます。

博士課程ともなると学会参加などの交通費、宿泊費、書籍代、その他諸々かなりの費用が必要で、よっぽど裕福な家庭ならともかく、博士課程に通うために色々やりくりして切りつめたりしている人が大半であろうと思います。

スポンサーがついたりすることもあるんだろうけれど、何処の馬の骨ともしれない学生に3年間の生活費と研究費、学会参加費その他諸々を出してくれるところは実際少ない。

だから、授業料免除制度は学生が研究に専念するための1つの大きなよりどころな訳です。
学振やその他奨学金が取れている場合はかなり幸運で、そうでない場合はバイトなんかをしながら研究に励む必要がある。

そんなんでは研究に割ける時間も、得られる結果も減る。
すなわち日本の学問の衰退を意味します。
「日本の研究が衰退している!博士課程進学率が下がっている!」なんて騒いでいる昨今ですが、その原因は火を見るより明らかなわけです。

優秀とされる人たちが集まる大学院、博士課程。
世界と対等に話ができる、戦える人材が集まっているはずです。
その芽を摘まないように、世界と戦える研究成果を生み出し続けるために、授業料完全無償化と博士課程学生への給与支給をはじめとする博士課程の待遇改善を切に願います

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