頭のカビ
風呂に入ったあと、髪を乾かさないとカビが生えるという噂を聞いた。
私は、正直頭にカビを生やしたくてしょうがなかったのですぐに実践した。
髪を乾かさないで1ヶ月が経った。
お風呂に入って頭を洗おうとしたら
「カビビ カビビビビ」
と頭から聞こえてきた。
私は頭にカビが生えたことを察した。
嬉しかった。そのままカビを育てることにした。
次の日、カビが何か言っている。
「頭を洗わないほうがカビは育つ」
むむむ、そうだった。私は実にバカである。
頭にカビを生やしたいのに毎日頭を洗っていたのだ。
後悔した。今まで洗っていなかったらどれほどのカビを生やせただろう。私は今までどれほどのカビを無駄にしたのだろう。自暴自棄になり、カビへの申し訳なさと自分の無力さに涙した。
頭にカビが生えるとはこのことだろうか。
自暴自棄になり、カビへの感情移入をしてしまう。このことがまさに頭にカビが生えるということなのだろうか。
カビは言う
「頭を洗わないほうがカビは育つ」
頭を洗わずに1年が過ぎた。
周りの人からは臭いと言われて避けられ、私と関わってくれるのはとうとうカビ仲間だけになった。
カビ仲間の華美ちゃんは、私と同様に頭にカビを生やしたくてしょうがない人だ。
カビを愛している。私も同じだ。
私達は周りから“バイ菌姉妹”と呼ばれている。
カビも菌の仲間なので、そのあだ名は誇らしい。
二人で順調にカビを育てていたのに、ある日突然華美ちゃんが頭を洗い始めた。
「なんで頭洗ってるの?!カビが消えちゃうよ!」
「あなたは気付いていないだろうけど、頭にカビが生えるのは異常なのよ。カビは私達をコントロールする。カビを育てるほど私達の体はカビに乗っ取られる。」
華美ちゃん。あんなにカビを愛していたのに。突然訳の分からないことを言い頭を洗い始めるなんて。
華美ちゃん。華美ちゃん。
「うわああぁぁぁぁ!!!!」
私は華美ちゃんを殺してしまった。叫びながらチョコレートを沢山食べさせ、鼻血を大量に出させ、出血多量で死なせてしまった。
ふつふつと怒りが湧いてくる。
「おかしいだろ!!頭を洗うなんて!!」
そうだ。私はカビに乗っ取られたのだ。
私は言う
「頭を洗わないほうがカビは育つ」