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【2020.02.27】あの日見た、ハバナイという名の優しいディストピア。

2020.02.27 @恵比寿 リキッドルーム

もう半年以上も前になってしまったけれど、忘れもしないこの日は、Have a Nice Day!(ハバナイ) のツアーファイナル。私がコロナ前に行った最後のライブになる。

Have a Nice Day!(ハバナイ)とは、ニューウェーブなどに影響を受け2011年頃より東京で活動を開始し、自らを「ジャンク・ディスコ・バンド」と名乗っている日本のロックバンド(初めて知った)。
(Wikipediaより)

あまり言いたくないけれど、浅見北斗は天才なんじゃないだろうか。白目でフードを被ったふざけた姿からは想像できないほど、とにかく美しく切ないメロディラインを紡ぐ。

「わたしを離さないで / Have a Nice Day!(ハバナイ)」

この頃はまだコロナの全容がまだあやふやで、ライブも中止にするか決行するか様々な見解が飛び交っていた時期。ハバナイも「払い戻しもインスタライブもするから来たい奴だけ来てくれ」っていうスタンスだった。

正直、ハバナイのライブは危険だ。

2019年に怪我人が出てから、ダイブ・リフトアップ・クラウドサーフの類が禁止になったほど、ハバナイのライブはいつも異様で過激な熱を帯びていた。私も時にその熱に自ら飲み込まれ、時に見知らぬ狂った隣人たちと名も無いダンスにふけり、時にその狂気の渦を少し離れたところから見ているのが何よりも好きだった。だからモッシュが禁止になってからは、まるで好きなものを取り上げられた子供のように、なんとなくライブから足が遠のいてしまっていた。

そんな事情もあって本当は、このツアーファイナルも行く予定じゃなかった。だけどコロナでライブの是非が問われている状況を見て、今行かないと一生後悔するかもしれないと、払い戻しをする人もいる中、私はライブ前日にチケットを取ることにした。

その日のライブ音源がSpotifyにUPされている。

この日のライブは、少なくとも私の知るライブのそれではなかった。

みんなマスクをしていたし、あの浅見さんですらこんな状況の中来てくれて…ってどこか申し訳なさそうにしていた(相変わらずヤジは飛んでいたけど)。

でも、ファウストが鳴り響いた瞬間、ダンスフロアはただの混沌としたディストピアシティと化した。

本当は世界平和なんてどうでもよくて
全てを支配して めちゃくちゃにしたいだけ
本当は世界平和なんてどうでもよくて
あなたを支配して めちゃくちゃにしたいだけ

ファウストのここの歌詞がとても好きだ。
不思議と本当に世界平和なんてどうでもよくて、良くも悪くも明日も明後日もない “今” この瞬間にだけ生きている、汚くもきれいな自分に気づく。

ハバナイのライブの何が好きって、みんな浅見さんを見ているようで見ていない(いい意味で)ところ。みんな浅見さんを通してモッシュピットに “何か” を見ている。私が見ている浅見さんと、誰かが見ている浅見さんは決して同じではない。モッシュピットにだけ吐き出すことを許された、そんな懺悔にも似た救いがそこにはある。

なんだろう?

相変わらずフロントマンの浅見北斗は、ステージ上で我が物顔で中指を立てているし、身体をぶつけ合って感情まかせに身体を揺らしてみたところで何かが解決されるわけじゃない。
でも確かにそこには、いつも優しいディストピアが広がっているのだ。

私の中の永遠のアンセム「フォーエバーヤング」

浅見さんの声はカッスカスだし、まだ内藤さんがいた頃のライブ。

例えるなら、最初はそんなに好きじゃなくて付き合い始めたのに、気づけばこっちの方がめっちゃ好きになってるって感覚に近い。
いやだな、恥ずかしい。悔しいけど、大好きだハバナイ。

これ以上、中毒者が出ないことを切に願っている。

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