燦たるサンタリ黒桟革
SANTARIホールカットシリーズ4種も残すところ3アイレットのみ。
今回はいよいよ最終章?!です。
ですがその前に残念なお知らせが。。。実はSANTARI TOKYOを主宰されている中の人こと舘さんがノルウェーに移住されることを決断され、それに伴い現在SANTARIの新規オーダーは休止中となっています。
私は今年(2024年)の1月にその話を伺ったのですが、オーダーはなんとかギリギリ間に合いました、というか間に合わせました(がはは
さてさてそんな最終回?!にふさわしい、待望の豪華仕様です!!じゃじゃーん!!!
KUROZAN × SANTARI
やはりいつかどこかでやらねばなるまいと思っておりましたこの組み合わせですが、やるからには半端なモノをお願いするわけにいくまいと、あーでもない、こーでもないと毎度のことですが、オーダーにはかなり難渋をいたしました。仕様決定にあたり例によって紆余曲折があったわけですが、完成仕様をご案内しますと、
・アッパー:白黒桟革
・ライニング:ジビエ鹿革
・中底:クロスタショルダー(&シャンク位置調整)
・ノルベジェーゼ・チェーンステッチ
・べベルドウエスト
・矢筈コバ
・ピッチドヒール
・ハーフラバー&第一表ハトメ
となっております。盛りに盛ったカンジになっておりますが、原案ではさらにサイドシームにした挙句にそこにSANTARIマークのタグを差し込んでみたり、キルトを追い盛りしてみたりと輪をかけてゴテゴテ仕様だった模様。なおコストやスケジュールの関係から今回はお見送りオミットいたしました(苦笑)
コンセプトは、SANTARI3アイレットホールカットのデザインの大きく開いた履き口がやはりとっても涼しげですので、その特徴を活かすべく『夏用途の軽快な靴』というのを考えました。
モチーフはジュートサンダル。ノルベジェーゼ・ヤハズコバ・ピッチドヒールでその意匠を表現してもらっています。
3アイレットモデルの持つ、ファニー&ファンシーなキャラクターを活かしつつ、一方で全体を生成り調でまとめることで、素朴さや軽やかさ、そして落ち着きを持たせてバランスを取りにいっています。
それでは仕様を個別に見てまいりましょう!
【白黒桟革】
白黒桟革、、、なんだか字面がロードスタークーペ、、、みたいになっておりますが、白い黒桟革です。白なめしに白漆ですね。
やはりSANTARIホールカットシリーズの中でもイチバンのクセモノである3アイレットデザインにぶつけるにはこれしかないだろうということでこの革を選定をいたしました。
黒桟革と言えば、「革の黒ダイヤ」という異名があるように、黒色を筆頭に重厚な革のイメージが強いのですが、この白黒桟革は一転して柔らかな雰囲気が特徴です。
白の革靴、ともなるとオシャレ上級者アイテムとなりコーディネートが難しそうなのですが、そこは丈短のローファーライクな3アイレットデザインと、真っ白ではなく乳白色の色合いの白黒桟革とすることで、リネンシャツにジーパンなどのコーディネートでラフに着用できれば、というのが目論みです。
特に白漆はホワイトではなくミルクティー色でコバ周辺の生成色とも良く合っているのではと思います。
ちなみに調べたところでは白なめしも白漆も経年変化量が大きく、それぞれ白なめしは色濃く、白漆は白方向に進むようなので、これからどういうふうに育っていくのか非常に興味深いです。
なおこちらの白黒桟革はもちろんの坂本商店さん謹製でございます。また黒桟革の靴ついては黒桟革で靴を誂えるで詳しく書いております。
【ジビエ鹿革】
耐久性や吸湿性が高いと言われる鹿革ですが、今回はその機能性ももちろんですが、色味という点でも採用しました。履いてしまえば見えない部分ではありますが、この3アイレットデザインの場合、履き口が大きいため、靴単体で見た場合、ライニングの露出面積は結構大きくて目立つ部分になります。ですので白っぽい革ということで鹿革にしてみました。
なお今回もバリードさんから入手いたしました。
【クロスタショルダー】
前回の6アイレットホールカットはSANTARIスペリオール仕様を追加してもらったのですが、すこぶる良かったので、今回も同様にしてもらっています。ですので、中底材はイタリア製クロスタショルダーとなっております。
やはり履いた感触は圧倒的に剛性感がアップされますね。常々アッパーやライニング材によって大きく履き味が変わると口うるさく述べてまいりましたが、銘柄変更による体感差は中底材がいちばん大きいのでは感じています。
ただ今回のようなローファーライクな靴のキャラクターだと比較して柔軟性のある国産中底材でもよかったような気もしないでも。靴の方向性によっては甲乙つけ難しですね。
【ノルベジェーゼ・チェーンステッチ】&【ベベルドウエスト】&【矢筈コバ】
黒桟革と並び、本靴の外観を彩り、そのキャラクターを強烈にカタチ作るノルベジェーゼ・チェーンステッチ。
実はこちらも随分なヘンタイ仕様となっておりまして、多くのノルベ靴は360°、カカトまでぐるっと一周がフツーなのですが、この靴は180°、踏まずウエスト手前までになっております。なのでフロント・ノルベジェーゼ製法。
今回のこの処理については最後の最後まで舘さんに悩んでいただきました(爆)
ちなみに私からは360°全周ステッチにすると重い、かつピッチドヒールにするのでそことのバランスから、カカト周りは外してほしい旨でオーダーしておりましたので、ステッチの始終端は、カカト直前までの270°か、今回のような180°の2択になるわけなのですが、カカト部分までのつながりをどう処理してまとめるのか、というのが問題になりまして、
最終的にはウエストを絞り込むベベルドウエストを挟み込むことでボリューミーな前半とスリムな後半を上手につなぎあわせていただいております。
SANTARI公式サンプルと見比べていただきたいのですが、ウエストラインは前述の処理に加えて、コバを矢筈にしてもらっています。
意図としては、高さのない3アイレットデザインをノルベジェーゼにすることで見た目が重くなりそうだったので、視覚的な重心位置をチェーンステッチラインまで上げて軽快さを出したかったことと、ピッチドヒールとのバランス、になります。
【ピッチドヒール】
どこまでいっても男性の私が履く用なので、テーパー角はほどほどにしてもらっていますが、さらにヒールを細くすれば、張り出したコバからのラインがベベルウエストで絞られてヒールで立ち上がる様がより強調されてさらにセクシーな靴に仕上がると思います。
【ハーフラバー】&【ハトメ】
毎度のいつものやつですが、ベベルドウエストが絶景すぎますね!
【完成】
「ノルベ」の項でもあったように、製作にあたっては(今回も)舘さんにご苦労いただいております。ノルベジェーゼ製法のおかげで底付け時に汚れ防止のために覆うカバーができなかったり(しかもアッパーは白)、オーダー時点では仕様になかったベベルドを盛ってもらったりと、完成にあたって御尽力をいただきました。
また白黒桟革の調達にあたって坂本商店さんにもご相談をさせていただき快くご対応いただきました。
改めて関係各位皆様方にはお礼申し上げます。
【SANTARIホールカット・コンプリート】
というわけで、ようやっとSANTARIホールカットシリーズ4種をコンプリートいたしました。実に長かったですね。
あらためてそれぞれを紹介いたしますと、なかなかに個性豊かな仕様となっております。
3アイレット:白黒桟革・ノルベジェーゼ【燦たるサンタリ黒桟革】
4アイレット:ジビエ猪革・豚革ライニング【数奇ものホールカット】
5アイレット:バーガンディ・レンデンバッハソール【SANTARIとわたし】
6アイレット:パティーヌ・フィドルバック【たそがれのいろ】
どれひとつとっても素直な靴がないところが、オーダー主の性格を如実に現しておりますね。いいカンジです!
それよりも今までの冗長々文記事からすると今回は最終回!?なのにずいぶん短い!?とお思いになったそこのアナタ!なかなか鋭い!
なにせ4種類あるうちの4つを集めて悦に入る、なんていうのは芸がない。品がないほうは今更どうしようもないですが、芸のほうだけでもなんとかしようじゃないか、と思うのです。
というわけで、4種コンプリートした者にだけ授けられるというシークレットモデルに挑戦です!
そんなわけで次回、「シン・SANTARIホールカット(仮)」に乞うご期待!
『そんなにホールカットが好きなのか?』
続く