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黒桟革で靴を誂える
2024年10月27日:タイトル写真変更・記事内容修正・白黒桟革追加しました
タイトル写真は、私が実際に愛用している黒桟革の革靴です。右から型押し黒桟革・白色のホールカットと型押し黒桟革・黒色のホールカットと、型押し黒桟革・茶色のジョッパーブーツです。
今回「黒桟革で靴を誂える」と題し記事を書くのは他でもない、この孤高の革の、そのポテンシャルの高さについて知ってもらえたらと思い、感じたことを綴ります。
結論を先に申し上げると、【革好きの靴好きなら、黒桟革で一足は誂えるべきだ】です。
これから実際に黒桟革の革靴を所有して感じたことや、皆さんが気になるであろう点について、書いていきたいと思います。
なお記事内容については、適宜更新していきたいと思っていますので、つらつらと箇条書きのようにしてます。
現在所有している靴は、【坂本商店・型押し黒桟革の黒を、宮城興業・謹製誂靴でホールカット】、【同・型押し黒桟革の茶を、同・謹製誂靴でジョッパーブーツ】【同・型押し黒桟革の白を、SANTARI TOKYOでホールカット】となります。ちなみにそれ以外に【ル・ボナー・残心二つ折り札入れ】【キュリオスキュリオ・フォルマルシェンテ時計ベルト】を共に型押し黒桟革の黒で、【three2four・時計ベルト】を型押し黒桟革の白で使っています。
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◇足馴染みがよい
ワタクシ、革靴のなかでも、ホールカット・デザイン、といわれる一枚革で仕立てられた革靴が大の大好物でして、酔狂にも同じ木型のホールカットを5足持っています。
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違いは、うち2足はレザーソール、3足はラバーソールで、冒頭の黒桟革で仕立てた靴はラバーソールになります。あとは黒桟革のものだけがストームウェルトで、それ以外の仕様は同じになっています。つまり、製造個体差を無視できるとすれば、アッパー革違いによる差分がわかる、はず、ということになります。
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そうして同ラスト・ホールカットの5足中の5足目として発注した、型押し黒桟革ホールカットが仕上がってきて初足入れしたときを振り返りますと、足入れした瞬間からすでに違いが歴然。感想としては「とても足馴染みよい」です。足の形に則してくれているような感じがしました。しかしながら、それはただ柔らかい、というのとはまた違うのです。
歩いてみて感じたのは、ハリ感がある、ということです。あるいは、腰がある、という表現かもしれません。特に屈曲部は素直に曲がるが、そうでない部分は適度な固さがある、このメリハリが、黒桟革で靴を誂える醍醐味、のように思います。
なお、この特性については、黒桟革のパイオニア、ZinRyuさんの考察によると、
漆となめしの融合技。 なめしは柔らかく、漆を幾重にも施し、表面の奥まで根付かせる。その結果一定のテンションがかかると根を張った漆が割れ柔らかさが出る。 テンションがそれほどかからない所はしっかりコシを保つ。2012年から黒桟革を靴で取り扱ってきて、そのように考えています。
とのことです。ぜひZinRyuさんのnote記事もご参照くださいね!!
なかでも、『036話:黒桟革という革2(制作側の視点から)』は必読です。
◇実物はもっとカッコいい
実は黒桟革、残念なことに写真写りが非常に悪い子です。私の腕が悪い、、、というのではなく、いまだ黒桟革がきっちりと撮された写真を見たことがありません。つまりネット上で検索して出てくる黒桟革の写真の何倍も現物はカッコいいです。
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というのも黒桟革はシボ山に不規則に漆が載っており、光源によって、とてもキラキラします。どうもこの不規則なキラキラが、写真にはうまく反映されないようなのですね。そういう意味では動画で見た方がより実物に近いのではないかと思います。
さらには先に述べた足馴染みが良い、に繋がるところだと思いますが、木型形状への追従性もとても良いようで、ラストのフォルムが綺麗に出ます。前述の通り同ラストで5足持っているうちダントツでシュッとしております。
◇ほどよい希少性
黒桟革を使った小物はそれなりにありますが、靴ともなると、あるにはありますが、あんまりない、です。でも見た目はユニークなので、知っている人は知っている、そんな革です。
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◇ほどよいキラキラ
漆がキラキラしている、といっても、ギラギラしているわけではないです。一見するとシボ革くらいなものです。また光源によって表情も変わりますし、なにより品があります。
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◇漆について
まず、漆のポッチリ、剥がれます。これは靴だから、というわけではなく、二つ折りの財布を常用していますが、やはり剥がれています。黒桟革の宿痾(しゅくあ)ですね。味だと思って受け入れましょう。ボロボロと次から次へと剥がれる、ということではないですが、擦れたり、可動部であったり、あるいは元々漆の定着が甘いところは、剥がれてしまいます。
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しかして剥がれた箇所は、黒桟革専用クリームを塗り込めば、目立たなくなりますので、そんなに心配はいりません。
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ちなみに黒桟革専用クリームは坂本商店さんのホームページから購入できます。ポチッ
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◇経年変化について
漆は透明感から光沢感へ変わり、より輝きが増す、と言われております。
う〜ん、個人的にはそのあたりはあまり実感はありませんので、あったとしても非常に緩やかなものかと思います。
黒色についてはシボの谷間が白ばむくらいでしょうか。あまり変化する感じはしません。
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一方、茶色は抜けていく感じですね。いずれも有色靴クリーム等で磨けば大丈夫です。
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◇お手入れについて
ほぼノーメンテナンス、乾拭き・水拭きでOKと言われております。
一方で、クリームがかなり入る革のようですので、逆に過剰メンテナンスには注意が必要です。
◇茶色の黒桟革について
前述の通り黒色はほぼ変化しない、と思われるのですが、一方で茶色は、色抜け、かつクリームががんがん入るので、大いに化ける可能性があると思っています。時期を見計らって茶色以外の色を入れてみようと思ってます。乞うご期待!!
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ル・ボナーの松本さんが、残心二つ折り札入れの黒桟革茶色を愛用されており拝見させてもらったことがあるのですが、いい感じで色抜けしておりました。靴の場合はより太陽光にさらされるなど過酷な環境下ですので進行度合いは早いのではないかと思います。ただ小物と違って靴は有色クリームが使えるので、かなり遊べるのではないかとも思っています。
というのも、黒桟革の茶色って、他の色が押し出しの強い中、目立たない色のせいか、中では人気がないそうなのです。でも、漆部分は変化せず、他の部分は着色可能・変化するとなると、実は一番靴向きな革、なのではないかと
【茶色の黒桟革のステキな可能性】
というわけで、2022年12月1日に、満を持して、HARK寺島氏にHARKオリジナルクリームのパープルで磨いていただきました。
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結果は大成功!!いいかんじのバーガンディーといった風情になり、かなり印象が変わったかと思います。
なお1回でこの変化です。ちなみに寺島さんが楽しそうにクリームを入れていたのがとても印象深いです。それぐらいに劇的な変化でしたね。
もちろんHARKオリジナルクリームは一般的な市販の靴クリームとは比較にならない染料量だとは思われますが、市販クリームでも回数を重ねれば少しずつ色を入れることは可能だと思われます。
引き続き、「茶色の黒桟革のステキな可能性」については追求していきたいと思います。
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◇シューツリーについて
出来うる限り、靴の形にあったシューツリーを追求すべきです。シボ革で、かつ屈曲分はかなり柔らかくなっているため、結構ガッツリと履きジワが入ります。ですので、しっかりと伸ばしてあげられるシューツリーが望ましいです。
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◇ハードルが高い
黒桟革の名前を知っている、あるいは見たことはある、という方とお話をはじめると、ほぼ100%「あの高い革」というのが第一声になります。DS単価もそれなりですが、革自体が半裁からの発注になるので、非常に敷居が高くなるようです。なのでどうやって黒桟革の靴を作ってもらうのか、というのは正直なかなか難しいです。。。自分の場合は、たまたま誂えるチャンスに恵まれた、としか言いようがないです。なおネットで見たところ、黒桟革に惚れ込んで、ご自身で半裁分を直接発注されて、革持ち込みで靴のオーダーをされている猛者もいらっしゃいますので、お金に糸目をつけなければ、、、というかんじはあります。もしあなたが黒桟革を使って靴をオーダーできる機会に出会えたなら、躊躇なく発注することをオススメします。
◇履き心地の再現性
ベタ褒めしている履き心地ですが、実は、再現性の確信がないのです。
ここまで、褒めちぎっておいて、えーっていうはなしなのですが、当事者の私が一番えー、、、なのでどうか赦してください。
どういうことかというと、黒桟革1足目のホールカットに味をしめて、黒桟革2足めに同じラストでジョッパーブーツを誂えたのですが、なんだかホールカットに比べて、履いた感じが「モッサリ」しているのです。
調べたり、関係各所に聞いて回ったのですが、今のところ、考えられる原因は次のとおりです。
・個体差:そもそも天然素材を、さらには機械を使っているとはいえ人力で靴に仕立てているので同じ条件でも同じようにはならないです。
・デザイン違いによる履き心地の差異:スミス・エバンス効果ですね。まして短靴と長靴なので足への当たり方は全然違いますからね。
・製法が機械式吊り込みのためテンションの差異:どうも黒桟革は、よく伸びるらしく、吊り込み加減がシビアなようです。
・ライニングとの相性の差異:詳しく説明すると大変なので端折りますが手持ちのホールカットとジョッパーブーツは、ライニングの処理もラインング材も違うのです。
個人的な感想としては、このホールカットはライニングも一枚革で仕上げられているのに対して、このジョッパーブーツのほうは前半甲周りを豚革で仕立てられているので、こういったライニングとの相性が大きいのではなかろうかと今のところは思ってます。ただコレは黒桟革に限らず、どの革靴においても言えることではないか、とも思うのです。
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◇クリッピング時のシワの懸念
ブーツ、の場合になりますが、ブーツの立ち上がり部分を一枚革でするには、クリッピング処理をしなければならないのですが、どうしても無理くり引き伸ばす形になるので、変な皺が入る可能性がある、とのことでした。たしかに他社事例でその現象は確認できたので、私はリスクを避けて縫い割りにして作ってもらいました。ただ綺麗に仕上がっている事例もあります。
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◇種類がいっぱい
黒桟革ですが、今回ご紹介した、型押しの他に、手揉み黒桟革、黒桟革・極、とあります。見た目も触った感じも全然別物、な印象なので、想像ですが靴にしてもかなり違うのではないかと思われます。また色も、型押しでいえば、黒・茶・藍・杜若・翠・茜・白と豊富です。(ただし茜は製造過程上、力が掛かる用途には向かないようです)
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なかでも型押し黒桟革の翠あたりはブーツにとても合いそうな気がします。誰かやってくんねぇかなぁ〜(ハート
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◇黒桟革で盛り上がる!?
経験的に、黒桟革を作品・製品に使ったことある作家さん・クリエーターさんとは、ほぼ間違いなく盛り上がれます。「え、靴に使えるの?」って皆さんおっしゃいますね。なので話題作りや、話の掴みのネタにはもってこいです。なお重要ポイントは、ご自身で黒桟革を使って作ったことがある、でして、触ったことあるや取り扱ったことがある、という場合との反応の差が大きく違い、ひとによっては食いついて来られます(笑)
以上、実際に所有して履いてみて、気になった点をつらつらと書き連ねてみました。何かのお役に立てれば幸いです。
◇【追記】黒桟革・白
黒桟革といえば「黒」が象徴的ですが、前述のとおり他の色もあります。なかでもこちらは黒とは真逆の白でして、白なめしの革に白漆を塗ったものになります。黒桟革には「革の黒ダイア」という異名があるように、黒色を筆頭に重厚なイメージが強いのですが、この白黒桟革は柔らかな雰囲気が特徴です。
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白漆はホワイトではなくミルクティー色で、白なめしと相まって、ベージュ系の優しい色合いですね。新時代の黒桟革を予感させます!
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