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言い訳のかたまり

関西方面に「遠慮のかたまり」というローカルな言い回しがあります。意味は大皿の一つ残し、のことなのですが、今回の靴は、考えに考え抜いた、煎じ詰めた結果、消去法で最後に残った選択肢、という「言い訳のかたまり」です。理由は関係各方面に不義理をしてしまってる感がありまして、でもそれは致し方ないのですよ、という言い訳をこれから開陳していきます。

今回のテーマとなるこちらの靴はショート・サイドゴアブーツです。

ネイビーのサイドゴアブーツ

※厳密にいうと、アンクルとかデミ、というカテゴリーになるのでしょうけれど、一般的なサイドゴアブーツの丈より短い、の意味でこの記事ではショートサイドゴアブーツと表現してます。

出発点としましては、誰もが一度は通るであろう、雨天用の革靴問題です。皆さん、それぞれに一家言おありかと思います。革靴愛好家にとって普遍のテーマであります。

とは言っても雨天用の革靴については、個人的にスエードのサイドゴアブーツというのが一つの結論でして、実際、雨天時のみならず冬季を筆頭にオンからオフを問わずに、かなり重宝しております。

スエードのサイドゴア 雨の日の装い

ですがただ一点難点がありまして、夏季にスエードのブーツというのは、見た目が非常に重い・暑い、のです。ですから夏季の雨天用というとてもニッチな用途の革靴を再考・再検討しておりました。

考えたプランとしては、安直ですけれど、丈を落とすことによって見た目の重さを幾許か軽減できるであろう、ショート丈のサイドゴアブーツ、なのですが、これが実はパターンオーダー・MTOの既成パターンとしてはほぼないんですよー。オーダー品としてはあるにはあるのですが、それはノーマルのサイドゴアブーツの型紙修正で、丈を落とす、カタチになるのですね。

サイドゴアはサイドビューがイチバン映えると思うのです

パターンオーダー・MTOに関して言うと、こと初回オーダーにあたってはそもそも現物を手に取って、というか足入れて確認することができません。サンプル品や先行オーダー事例を踏まえて想像で補完しつつ、最終的にはバクチでオーダーをかけるわけですが、そこへ型紙修正分を加味しないといけないとなるとリスクの二重苦です。特にショートサイドゴアは丈感がすべてですので、あてずっぽうで丈指定するのはさすがに躊躇されます。

それに、パターンオーダー・MTOの標準パターンは、ミリ単位でデザインを詰めてパターン化しているはずなので、そういう煮詰められたデザインを、素人考えでざっくりと丈切っちゃうのってどうなのよ?とも思うのです。しかも繰り返しになりますが、ショートサイドゴアにとって丈はイチバン重要なところなのに!

そういう点を踏まえて、色々と調べ回って、たどり着いたのが、宇都宮のマルシン靴店さんの、オリジナル・5インチ丈サイドゴアブーツです。

マルシン靴店オリジナル ES171とCS171

ちなみにこちら、宮城興業の謹製誂靴のサイドゴアブーツの型紙修正の【留め型】になります。

ここからが言い訳になるのですが、実は宮城のパターンオーダーは、従前よりお世話になっているお店がありまして、そことの兼ね合いをどうしようかと散々悩みましたですよ。。。マルシンさんのInstagramの写真を見せて、こんなカンジで、と型紙修正かけることも検討したのですが、それはそれでマルシンさんはもちろん、そのお店にも失礼な気もしますし、もっと言うとマルシンさんのショートサイドゴアは単純に丈を切っただけではないのですね。色々と試行錯誤をされてのオリジナル仕様、のようなのです。

それとこの夏期雨天用というニッチすぎる革靴のアッパーをどうするかとなったときに、なかなか適当というか、実用性とコスト面で折り合う革を考えたところ、宮城の標準キップっていうのがイチバン適していると思われた、というのも理由です。お値段それなりのMTOになると、逆に気を使わなくてイイ革がないのですよね。。。ちなみに今回のショートサイドゴアは、腰裏革も同色のアッパー用キップを使用していますので、なんちゃって無双仕立てになっております。

腰裏共裏のなんちゃって無双

ということで、もんどりをうちながら色々と検討した結果、今回のショートサイドゴアブーツはマルシンさんでオーダーいたしました。

そういう訳で、いつもお世話になっているIさん、ごめんなさい。MTOで型紙修正の相談をした®️さん、ごめんなさい。

ちなみに、マルシンさんには、ずいぶんと前から特に宮城の靴をオーダーするにあたってInstagramをとても参考にさせていただいておりまして、その内容であったり、また今回初めて直接やりとりをさせていただきまして、感じたことなのですが、とてもユーザー視点でお仕事をされているなぁと思いました。このオリジナル・5インチ丈サイドゴアを筆頭に、痒いところに手が届く感覚です。非常によくわかってらっしゃる、そんなふうに感じました。

使い回しは非常に良さそうです

今回こちらのマルシンオリジナルのサイドゴアはラウンドトウ、ESラストでオーダーしておりますが、縦横の比率のおかげでしょうか、ややもするとショートノーズ気味なESラストであっても、とてもシュッとしています。

マルシンさん曰く、このショートサイドゴアは、ユーザーの要望もあって、最終的にオリジナルの型紙を起こし、息の長いモデルになっている、とのことです。

カカトからの眺めも素晴らしいですね

冒頭にも述べたとおり、意外にないんですよね、ショート丈のサイドゴアって。でもそれなりに需要がある、ような気もしないでもないので、ぜひ、パターンオーダー・MTOを展開されている靴メーカー各社におかれましては、ショートサイドゴアのパターンの検討をお願いいたします。日本の風土や住宅事情を勘案するに、割とマッチした靴、のようには思うのですけれどー。

宮城ES121ジョッパーブーツとの丈比較

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