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SANTARI LAST ONE PIECE

2025年、新年明けましておめでとうございます。
ついこのあいだ、SANTARIホールカットシリーズ5種類をコンプリートし、名実ともに世界でイチバンSANTARIホールカットを有する男たかはしです(公式認定済)。なおSANTARIシューズを世界でイチバン持っている男は別にいるようです(舘さんの壮行会でお会いしました)。世の中ホント奇天烈な人ばかりですね!(笑顔)

ギネス非公認(今のところ)

さてさて、いよいよSANTARIホールカットのnote記事もクライマックスの最終章になります(たぶん)。最後のラストピースである5種類目のシークレットモデル(と勝手に位置付ける)となる7アイレット・ホールカットブーツについての物語になります。

まずは本題に入るまえに、おさらい方々、SANTARI・ホールカットについて説明したいと思います。

もう公式ホームページも閉じられており、オフィシャルですとInstagramぐらいになってしまいましたが、SANTARIという革靴ブランドのホールカット・シューズになります。

なお「ホームページも閉じられている」と述べたのは、SANTARIについては主催している中の人こと舘さんがノルウェーに活動の拠点を移されたので、現在ブランドは休止中となっています。

そんな革靴ブランドのホールカットになるのですが、今でこそ珍しくはなくなりましたけれどラインナップにホールカットがないブランドもある中で、ホールカットが4種類もあるとても素晴らしいブランドです。ステキ!

SANTARIホールカット・シリーズ

それぞれのモデルのオーダーの仔細についてはぜひ、それぞれのnote記事をこれでもかというぐらい書いたので、これでもかというぐらい読んでいただきたいのですが、オーダーの時系列順で並べますと下記の通りになります。

きょうあくなつらがまえのしてんのうたち

振り返ってみてもどれもこれもクセが強すぎるオーダー仕様になっておりまして、最後のオーダーとなった今回のホールカットブーツが霞むほどです。

たぶん、いや絶対に舘さんじゃなければ、こーゆーメンドー臭いオーダーは受けてはくれなかっただろうと思います。

なのでそれが故、絶対にホールカット4種はコンプリートしようと心に決めていましたし、コンプリートした暁には5種類目として〆にホールカットブーツをお願いするんだとも考えて、割と早い段階で舘さんにお伝えしておりました(ですのでいきなりホールカットブーツのオーダーをかけた訳ではありません。そーいえばお会いするたびに必ずホールカットブーツのアレがホールカットブーツのコレで、と喚いていた気が)。

ちなみに当初の構想ですと、2024年初頭に3アイレット・ホールカット(白黒桟革)をオーダーしそのアガリを踏まえて、2025年中にホールカットブーツの仕様を本決定し、必要資材の調達・確保を行い、2025年後半に正式発注する腹づもりでおりました。

実は連邦の白い悪魔だった模様

その時間をかけて温めていた「ぼくのかんがえたさいきょうのほーるかっと・ぶーつ」の仕様なのですが、【アッパー黒桟革・ライニング熊革でそれを紺色のチェーンステッチのノルウィージャン・ウェルテッドで仕立てたホールカットブーツ】、モチーフはもちろん甲冑で、その名もSHOGUN(仮)にするつもりでした(爆)。

モチーフ

察しの良い方はもうお分かりですね、例の白黒桟革を使用した3アイレット・ホールカットは、実は単体で構想されていた訳ではなく、この黒桟革ホールカットブーツのテストベッドならぬテストシューズも兼ねて企画されていたのでした。(ということもあってその仕様の豪華さの割に3アイレットのnote記事の分量が今ひとつ振るわなかったのです。合掌)

ただ中の人の舘さんが2024年1月に、ノルウェー行きと2月末でSANTARIオーダーストップを発表されて大慌て、さてどうしたものかと考えに考えて、いったんは何とか頼み込んで移住先のノルウェーで作ってもらおうかとも思ったのですが、どうやら熊革がワシントン条約に抵触して国外に持ち出せないらしいという話を思い出し、こちらのSHOGUN(仮)仕様は泣く泣く断念。

代案を何か考えないと思った時に、そーいえば手持ちでデュプイのマロカーフの紫色があったのでこれでやるしかない、となり今回の仕様に至ります。

このマロカーフの紫色の革なのですが、【SANTARIとわたし】や【たそがれのいろ】でも触れているように「紫色の革靴」というものを考えるにあたって、そもそもの紫色の革を探し回った結果、この革にたどり着いて手に入れてはいたのですが、実際に現物を見て、やはり靴にするにはムズカシイ色という判断でお蔵入りさせていた、という曰く付きの革になります。

理由は、水シボの上品な雰囲気の革なので、お財布などの革小物はもちろん、バッグなどは問題なくイケると思うのですが、こと靴にするには色の押し出しが強すぎる、という判断です。やれてジョッパーブーツかなぁ、、、ぐらいに考えてしばらく死蔵するつもりでした。

ですので、逆にこういう、オーダー期限が迫り時間がないというアクシデントでもないと使うこともないだろうなと思い直して、あえてこの紫色の革を用いて、紫色の革靴というものに真正面から取り組むことにしたのです。

なおオーダーにあたっては、舘さんには、次のようにお願いしました。

紫色の革靴という、一歩間違えると単なる奇抜な靴で終わってしまうとても危ういテーマですが、ホールカットブーツデザインにデュプイのマロカーフを奢り、SANTARIラストの流麗さや、細やかなディテール・丁寧な仕立て・絶妙な按配、といったSANTARIの技とセンスによって、【端正なホールカットブーツ】に仕上げていただきたいです。
奇抜な紫色 × 希少なホールカットブーツというキテレツさを、端正なフォルム × 精緻な仕上げでドレスシューズにまとめていただく、そんなイメージでいます。

意図としては、このマロカーフの紫色、紫色の革としては落ち着いたパープルだとは思うのですが、やはり靴にするとアクが強すぎる印象であることがまず一点。

そしてホールカットブーツというデザインについてなのですが、踵から履き口にかけてのシャフト部分にデザイン状の切り返しが全くないため、(特に靴の後半が)ボテッとしたカタマリになり、全体として靴下みたいな見てくれに成りかねない、というのがあります。

InstagramやGoogle検索で世のホールカットブーツを探し回って見た限りその多くが、チゼルやスクエアトウでキメており、きっとコレを凡庸なラウンドトウでやってしまうとまさに靴下、になってしまうからではないかと邪推するところです。

なので、作りとしてディテールをドレス全振りで着実に積み上げて、実際上か見かけ上(視覚効果)かを問わずにフォルムとして絞れるところは絞って欲しい旨お願いしました。

というカンジに今回はこれまでと違って、紫という色とホールカットブーツというデザイン要素以外は極めてオーソドックスに手堅くまとめてもらっています。

それでは恒例の完成仕様から個別に説明していきたいと思います。


<デザイン:7アイレット・ホールカット・ブーツ>
今回のホールカットモデルのコンセプトのいわば1丁目1番地になります。もちろん既存パターンはありませんので、新規に起こしていただいております。

テストモデルその1

仕上がった完成post写真を見てくれた他の靴職人さん達が一様に「自分なら絶対にやりたくない」と異口同音に仰られるデザインです(白目)。(ただし舘さん曰くやりたくなさではダントツで前の3アイレット白黒桟革のほうだそうです。理由はぜひ【燦たるサンタリ黒桟革】で探してみてくださいw)

ホールカット自体がアッパーをワンパーツで裁断しなければならず、傷などの革の表面上のことはもちろん、製靴にあたって革の伸び方向もよりシビアに考えないといけないはずなので、歩留の悪さは地上最悪最凶だろうことは間違いありません。

ただしそこは一頭分まるまるの革、いわゆる丸革で持ち込んでおりますので、もちろん「革のイチバンいいところを惜しみなく」でオーダーは通しております。

テストモデルその2

ただどうやらサイドゴアブーツやジョッパーブーツのようなデザインの際に甲の立ち上がりの癖付けに用いられるクリッピングマシン、通称ギロチンが使えないらしく、舘さんもボヤいてらっしゃいました。

舘さんもボヤいてます

短靴と違って、ブーツは甲の立ち上がりで足を止めにかかるので、素人目にも成形が面倒であろうことがわかります。しかも使っているの短靴用の木型ですしお寿司(白目)。

ちなみにクリッピングとはこーゆーのです。グーグってみたのですが古典的な木型に革を貼り付けてワニで引っ張っているのしか見つからなかったので、ドーナツパイセンのツイートを黙って引用させていただきます(サーセン)。

そういった製靴上の無理難題が多いためか、「ホールカット・ブーツ」という想像するに容易な名前でありながら、現物となるとかなりの希少種だと思われます。

その昔トレーディングポスト大阪店でカルミナのそれを片足だけみせて(もちろん試着もさせて)もらったことがありましたが、その時はバックヤードからひっそりと出てまいりました。

対応いただいた店員さん曰く、陳列したが最後コレばかりオーダーされかねない、と。ちなみになぜ片足だけかというともう一方は東京のお店にある、とのことでした。サンプルですら希少。

ちなみにカルミナの常設カスタムモデルにはホールカットブーツがライナップされているのでホールカットブーツが欲しい諸兄はぜひ参考にしてみてください。

ちなみに「7」アイレットである理由は、「3」・「4」・「5」・「6」とくれば当然に「7」だろうということで極めて安直にお願いしました。ちょうど造形的にもアイレットの間隔的にも無理なく綺麗に収まっています。

7アイレット

なおバックステイは、強度面から棒市になっております。個人的には縫い割りからのドックテイルが好きなのですが、バチバチのタイトフィットのおかげでこのブーツを実際に脱ぎ履きしてみると履き口にかかる負荷がかなりなものでして、実用面からここは棒市で正解だと思っております。

棒市

<アッパー:デュプイ・マロカーフ【パープル】>
このホールカットブーツの最大の個性になります。

ホールカットブーツというだけでもすでにアク強めなにに、さらにアクの追い盛り、あくだくだくです(白目)。

デュプイ社のカラー名としては【Raisin】というようで、ズバリ干し葡萄色ですね。ちなみに限定色だそうです。一見パキッとした赤紫色ですが、光源で色目が変化する深い紫色です。

DUPUY Marocalf Raisin

革靴の色、については持論がありまして、短靴(シューズ)と長靴(ブーツ)は同じ革靴であっても別系統で、長靴のほうは服装の色のコーディネートの際、差し色として大きく外した色を用いても成立する、と考えています。

ですので、同じホールカットでも短靴ではやってない(事実死蔵していた)のですね。今回はブーツだから何とか成立するのではないか、ということでチャレンジしております。

ちなみにマロカーフ自体は靴用途での実績は多数あり、有名どころですと山陽山長で採用されております。靴に使う革としては安牌な革だと思います。

水シボといわれる一方向に細いシボが流れる上品な革です。型押しで光沢感の強い、シボも大きくなく一見すると遠目にはわからないので、ドレスシューズはもちろん、1パーツが大きめでより革の表情が楽しめるであろうブーツ系にもオススメです。

どうしても細いシボのため、釣り込むとテンションの大きくかかる部位であるトウやヒールの部分では革が伸びることによってシボが消えてしまう、ボールジョイントなどの屈曲部では履き皺とわからなくなってしまうので、靴の部位ごとの革の表情の変化をより明確に見て取れるという点で、ホールカットブーツとの取り合わせは最良だと思います。

またホールカットの場合、どうしても1枚パーツで裁断しないとならないため、各パーツでシボ方向を揃えるという芸当ができないため、立体時に水シボ方向がどうなるのか?というのもポイントですね。

今回のSANTARIホールカットの場合は、アウトサイドは縦方向、インサイドは横方向、なので正面からは斜め方向に水シボが流れています。

アウトサイドは縦方向
インサイドは横方向

なお同じ水シボ革でいいますと、いつかぺリンガー社のクリスペルカーフでやってみたいですね。

<ライニング:デュプイ【ナチュラル】>
安定と実績のライニング革ですね。なんのひねりもありません。アッパーもデュプイ、ライニングもデュプイなのでデュプイ無双です。

気持ち的には熊革まではいかないまでも、鹿革ぐらいは奢りたかったのですが、いかんせんラストオーダーの締め切りまでに時間がなく革の調達が困難なことを想定した場合や、パターンを新規に起こしてもらっていること、ラストがあくまで短靴用であることなどを総合的に考えて、なるだけリスクを減らす意図で、ド定番にしました。

履き口や羽根の隙間からチラリと見えたときにアッパーの色目とも問題なくまとまっているかと思います。というのはコバや靴紐、そして次の項でも述べますが、紫色の難しさの一因として、合わせる色がムズカシイ、というのがあるのです。

配色には苦労しました

<ステッチ糸:紫>
紫色の革に紫色のステッチ、つまり同色なのでそんなの当たり前じゃないかと思われると思いますが、世の中当たり前なことにこそ感謝しなければなりません(教訓)。

同色ステッチの有難さ

どーゆーことかと申しますと、製甲屋さんに紫色のミシン糸の持ち合わせがなく、部材支給というカタチで別途調達していただきました。世の中に紫色の紳士革靴がほぼ存在しないことの証左ですね(白目)。そんなことより使用後返却されてきたミシン糸はどーしましょうか???(白目&白目)。

これ1本で2km あと何km残っているのでありませうか(白目)

選択肢としては有り色のネイビーで縫う案もあったのですが、コバや靴紐との色のバランスを考えた際に全体としてとっ散らかる可能性を危惧して安全な同色にしてもらっています。(靴紐のないジョッパーブーツやサイドゴアブーツあたりだとステッチ糸がネイビーでも綺麗に収まるかと思います)

ちなみに「紫色の糸がないので代わりに紺色」の名残はベロタンのズレ防止用の靴紐通し糸に残っておりまして、こちらはネイビーです。白糸を紫色に染める案やベロタンに切り込みを入れる案もあったのですが、目立たない場所なのでネイビーでいってもらいました。

いいアクセント!?

ただプレメンテの際にHARKの寺島さんが目敏く発見し「これって何か意味(意図)があるのですか?」と尋ねられたのですが、上述の話をしたところ爆笑されてました(笑)。そりゃ理屈(しかも屁のほう)で靴をオーダーするワタクシの口から、まさかそんな気の抜けた話を聞かされるとは思ってもみなかったでしょうからね。まさに緊張と緩和、きっと枝雀師匠も草場の陰からほくそ笑んでおられることでしょう。

<コバ:ダークブラウン>
ついにこれまでオーダーしたSANTARIホールカットの各コバ仕様と異なりトーンダウンしたコバ色です。まさにセオリー通りの配色かと。

コバはダークブラウン

ライニングに黒を持ってきて、コバも黒で締めるという手も考えたのですが、黒だとちょっと色の系統が異なる気がしたのとコントラストがキツくなりそうだったので、手堅く焦げ茶にしてもらっています。

逆に焦げ茶以外に合うコバ色が想像できない、同色の紫色でも合わないんじゃないかと思わせるほどに紫というのは排他的な色で、あらためてムズカシイ色だと思いました。

コバの厚さに関しても、厚くも薄くもなく極めて中庸に仕上げてもらっています。このあたりの按配については、ぜひ同じくフィドルバック・ピッチドヒールでガチのドレス仕様にしつつも、コバというかエラの張り出しでキャラクターを出している6アイレット【たそがれのいろ】と見比べていただけると面白いかと思います。

なお今回は奇抜な紫ということで靴の色以外はあえて、このコバを含めて極めてオーソドックスな仕様にしておりますが、ホールカットブーツというデザインであれば、前出の6アイレットぐらいエラを張り出して、靴底部・ソール側でもメリハリをつけるというのもブーツらしい力強さが出て良いかもしれませんね。

<フィドルバックウエスト・ピッチドヒール>
オーダーコンセプトにあるとおり、とりあえず地道にしっかりと丁寧にディティールを積み上げて靴を構成しないことには破綻する恐れありなので、この二つは外せない仕様になります。

フィドルバックウエスト

フィドルバックウエストの美しさは言わずもがなですが、ここはピッチドヒールにも注目いただきたくて、側面から見る限りはそれほどですが(つまりヒール後ろ側の傾斜)、背面からはしっかり傾斜が見て取れます(ヒールサイドの傾斜)。このあたり上物とのバランスをしっかり取っていただいているところかと思います。

絶妙な按配のピッチドヒール

アンクル丈とはいえブーツとなると、短靴に比べて途端に垂直投影面積が増します。立体物として見たときに造形が横方向から縦方向へと変化するのですね。

ステッチやパーツの切り返しによる「線」でフォルムの形成を補強できる他のデザインと異なり、飾りが全くない一枚革で仕立てることになるホールカットは必然的に「面」で勝負せざるえません。しかもブーツの場合、特にシャフト部分の間伸びを警戒してしまいます。

幸いなことに抑揚のしっかりと効いたSANTARIのフォルムはブーツであっても健在で、さらにフィドルバック・ピッチドヒールにすることでボトム側でも絞り込まれ、デザインとしてより強調されています。

インサイド・アウトサイドとも躍動感のあるラインがしっかり見て取れます

<中底:クロスタショルダー(&シャンク位置調整)>
6アイレットホールカットで採用したクロスタショルダーですが、靴の剛性の強化が如実感じ取れて、続く3アイレットにも勇んで取り入れたものの、逆にソールの剛性が強すぎる印象でした。

はたして今回はと言いますと、ブーツのため、くるぶしまでしっかりホールドされるので底面の印象としては正直言って薄いです。

思うに固いとも柔らかいとも意識させられない今回の組み合わせが、底材と上物とのバランスが取れている、ということなのではないかと思われます。一周回ってようやっと部材選択の奥深さに触れることができたように思います。

<ハーフラバー>
ハーフラバーとフィドルバックの組み合わせは、ハーフラバーのウエスト側終端の見栄えとしては鉄板だと思いますね。美しい。コレぞ裏勝りの美学。

美しい切り返しが山の尾根にも見えます

<第一のみ表ハトメ>
これまでオーダーしたSANTARIホールカットの定番中の定番な仕様なのですが、ブーツスタイルだと第一ハトメを通さずに紐を結ぶというのも格好いいですね!

HARK KYOTOでプレメンテ

<靴紐:平紐【チャーコールグレー】>
実は思いがけず厄介だったのが靴紐です。紫色のムズカシさを最後の最後まで味わうことになります。

コバを焦げ茶にしてあるので同色のダークブラウンの紐でまとめれば良いやと安直に考えていたので、舘さんから納品時の靴紐をこの紐(パープル)で良いですか?と尋ねられたときは、バックオーダーの消化でクソ忙しい最中わざわざ紫色の紐を調達してくれていたことに感激したのと、そもそも自分には紫色の靴紐を付けるという発想がありませんでした。

ザ・ムラサキ

ただポップというかファンシーな色目で、靴全体としてムラサキ色が強調される追い紫になっているカンジがしましたのと、丸紐より平紐のほうが合う気がしまして、平紐に替えようと、いざ各色サンプルを取り寄せて吟味しましたところ、本命のダークブラウンは微妙、パープルも系統違い、バーガンディーはかすりもせず、選んだのがチャーコールグレー。

上からダークブランド・パープル・バーガンディー・チャーコールグレー

絶対また靴紐探しに苦労するのが目に見えたので、慌ててもう一対予備で購入しました。なかなかに気難しい色です。紫色って。

チャコールグレーの平紐にチェンジ

<完成>

今回もHARK KYOTOにて寺島さんにプレメンテナンスをお願いしました。
(※新店舗HARK KYOTO herbis osaka開店おめでとうございます!)

川面の燦めきのよう

マロカーフの特徴である水シボを活かした仕上げは、さながら燦めく水面のようです。

素直にカッコイイ

あらためて靴全体として眺めたときに、短靴からさらに縦方向にフォルムが延伸している分、ラスト形状の起伏であったりラインの抑揚がより強調されるカタチとなり、つくづくグラマラスな靴だなと唸らされます。

シュッとしてはります

特に懸案であったシャフト部分は短靴の木型を簡易的に延長しただけにもかかわらず見事にシェイプされております。光の当たり具合によってはまるで翼が生えているかのようです(もしやミノフスキー・ドライブ搭載?)。

お見事ですね

最終最後にSANTARIの真価を見せつけられた気がします。つくづくブランド休止が残念でなりません。


<終わり>
図らずも念願かなって紫色の革靴を手にするに至りまして、先日こちらも出来上がったばかりのポロコートと合わせてみました。

しゃきーん

モノトーンの服装にアイテムで紫の差し色を配するというコーディネートで、なんとか成立するのではないか、という目論みなのですがいかがでしょうか?(ちなみにバッグはカンダミサコBuff_petal・コートはTailer Peleon


<結びにかえて>
昨年11月に舘さんの送別会・壮行会があり、そして同月末には父が亡くなり、否応なしに節目というものを体現させられることになりました。文字通り喪失の十一月でありました。

SANTARIホールカット・シリーズも無事コンプリート出来、SANTARIのオーダー自体もストップした今となっては、革靴のオーダーについては、一段落ついたような気持ちでいます。(ただスクエアトウのホールカットというのが手付かずのままになっているので、次やるとするなら、そのあたりでしょうか?)

舘さんに初めてお会いしたのが、冒頭のブランド紹介で引用させてもらったInstagramのpostにある大阪での初オーダー会でして、ちょうど4年前になります。

当時はローファーをローチンしたっぱなしで、まだホールカットはラインナップされていませんでした。

SANTARIとわたし】でも綴りましたが、ローファーそっちのけで影も形もないホールカットのことばかり一方的に喋り倒しておりましたが(しかも1日1回だけでなく連日2回も)、いざホールカットがラインナップされたときは4種類もあって度肝を抜かれました。

そんな出会いの4年前に立ち戻ってみれば、それからSANTARIで5種類のホールカットをオーダーすることになろうとは思ってもみなかったことです。

つくづく人の縁というものは愉快なものです。

このSANTARIホールカットシリーズだけでも、舘さんを筆頭に、藤山さん、Arch Kerry清水川さん、宮澤さん、VARIED長谷川さん、Fg-trente藤澤さん、坂本商店さん、HARK寺島さん、サルトクレイスさん、前澤さん、キャナ子さん、ブンさん、なにわさん、その他クラフトマンチャンネル吉田さんをはじめ直接お目にかかれていない方を含め多くの方々にご縁をいただいてのものになります。関係各位には重ねて御礼申し上げます。

一枚甲戦隊サンタリン

さて、かくも冗長なオーダーの記録をnoteに書き連ねるのには大いにワケがありまして、ひとえにオーダーすることの楽しさを知ってもらえたら、という考えに他なりません。

もちろん誰も彼もが、このような手の込んだオーダーを出来る訳でも、そして受けてもらえる訳でもないことは承知しています。

ただ、読んでもらうことで追体験をしてもらい、自分だったらどうする・自分だったらこうする、というような想像をしていただくことで擬似的に、オーダーすることの楽しみを少しでも味わっていただければと思っています。

もちろん、あわよくば実際にオーダーしてもらえれば尚良し、です。

そしてそこから、更にもう一歩踏み込んでもらって考えていただきたいワケですが、世に溢れるモノというモノはけっして、安易につくられているわけでも容易につくれるわけでもない、ということに思い做してほしいのです。

我々自身の大元は誰が作ったものなのかは定かではありませんが、人が作りしモノは皆、縁が極まりしモノです。様々な人の手を経てカタチつくられ、ようやっと目の前に現出しております。コレ即ち皆、縁起モノであります。

最後に吉川英治氏の小説・宮本武蔵の終節を引用して〆めたいと思います。

波騒は世の常である。波にまかせて、泳ぎ上手に、雑魚は歌い雑魚は踊る。けれど、誰か知ろう、百尺下の水の心を。水のふかさを。

吉川英治著「宮本武蔵」
〆Boot

<完>

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たかはし
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