"追跡日記" 最終夜 HUMAN/CODE ENSEMBLE の思い出
クラシックな音楽堂が、故意に割れさせたノイズに満たされる。
ピアノを弾く"手"もノイズも、そのうちAIで生成されて無くなるものかもしれない。
…オールドレンズのノイズやゆがみがなくなったように。
"捕まえてみて。そのたびに違うかたちに、なっちゃうよ?"…って、ずっと言われてるみたいな音楽会だった。
こんばんは。HUMAN/CODE ENSEMBLE アンバサダーのリルです。
アンバサダーとしての"追跡日記"、最後の記事となりました。
リアルに体験した人には『思い出』を、これからアーカイブを視聴する人には『リアルタイムで感じたどきどき』を伝えられたらいいな…と思いながら、1週間前の"思い出"を書いていきます_φ(・_・
※アーカイブ視聴チケット(3,500円)売ってますよー✨※
モノクロと色彩 光と影
舞台の上は、3枚のLEDパネルと3台のフォルテピアノ、オブジェのようなステラーク・ハンド、オチアイVJブースと…なんか鋭角的なピアノ…?みたいなもので、みっしり。
あ。ちっちゃなトリニトロン発見✨そっかー…LEDパネルの"クラシック"はブラウン管テレビかぁ…ふむ。
17時すぎ。
はじまりは、こどもの声にも似た人工的なAIボイスのナレーション。
女声でも男声でもなく、英語なまりの日本語で、機械音なのに落合さんの口調にもそっくりで、ぞわぞわして鳥肌がたつ。
人と計算機の境界線をとかす"呪文"のよう。
前半は、フォルテピアノとVJのコラボレーション。
中世風の画が、フィルム映画の最初のように、ぎこちなく、でも目まぐるしくうつろっていく。
…これ全部、AIで生成した画像だ。既視感のある、でも誰も見たことがない画がぬるぬるとうごめく。
小川さんの演奏に合わせて、落合さんの指がターンテーブルのうえを忙しなく動き、画像をリアルタイムに操っているのが遠くからでもわかる。
気がつくと画像はモノクロになり…エッシャー?…ルドン?…とりあえず無意識をざわつかせる映像と、端正でクラシカルな古楽器の演奏が続く。
不穏な『暗い雲』(リスト)の演奏のあと、突然、ぐわーんと"割れた"教会の鐘の音が響き、『月光』(ベートーヴェン)が静かに始まる…LEDパネルの中の世界では、色のない満月がのぼり、黒い鏡面のような夜の湖はゆらゆらと波打つ。
…うわ……。
なんてダークで、美しいんだ…怖いんだけど、みとれてしまう。
『悲愴』(ベートーヴェン)『葬送』(ショパン)からの『夜想曲』(ショパン)
世界は淡い色彩をとりもどし、青いチョウ🦋に導かれて、闇から光へ(…物理世界からデジタルネイチャーへ?)飛んでいく感覚。
気がつくと、前半パートが終わっていた。
小川加恵さんが、"ダークな落合さんの魅力を伝えたい"と、どこかで書いてたことを思い出す。…すごい。小川さんの選曲と感性鋭い演奏すごいです。
リストもショパンも、こんな抽象絵画みたいに聴こえる(語彙力…)って初めて体験した。
"ダーク落合"の魅力も、しっかり受け止めました‼︎
舞踏
後半は、ステラーク氏が拡張ハンドロボットを"装着"するのを見るところから。
3人がかりでの装着と設定。人体には明らかに大きすぎる第3の腕。たぶん相当に荷重がかかって(身体のバランス含め)いるのに、微動だにしないステラーク氏のリアル身体の頑健さ。
ホール後半の席だったので、舞台全体は見わたせるけど、拡張ハンドの細かい動きはさすがに見えなかった。…ここはアーカイブに期待✨
ただ、ゆっくりとした動きで、型(ポーズ)から型へ動く様子は"舞踏"だなって思ったのと、クリック音や圧縮空気の音はふしぎなくらい音楽の一部として調和してた。
実は後半の記憶が、あまりなくて…。
藤倉大さんの新曲も、どこまでが"既定"されてて、どこからが"即興"なのかがわからなくて。ただ目の前で起こることを追いかけていたら、終わっていた。
ほんっとに、アーカイブでもう一度聴きたい。
セッション
藤倉大からの『ゴルトベルグ変奏曲』(バッハ‼︎)…からの即興演奏パートへ。
3人のパフォーマー(…いやまじで魔法使い)の技が絡み合うセッションは、しだいに力強くふくらんで、心地よいノイズとなって弾けとぶ。
…あー…これを聴く(体験)するために、3ヶ月間"追跡"してきたんだなぁ…
アンバサダーの面接で、初対面の小川さんと落合ファントークで盛り上がったことや
9月のリハーサル見学の衝撃と、そのあとのアンバサダー仲間(初対面)とのトークがすごく楽しかったこと、
10月のトークイベントでステラークさんから、アーティストの生きざまを感じ取ったこと(オーラがすごかった)…
いろんなことを思い出した。
ソフト・ロボティクス&古楽器&サンプリング・マシーンとしての電子ピアノ(Roland GPX-F1)&AIによる生成動画でのVJ。
1740年(バッハ)から2022年(280年間…‼︎)のピアノとメディアの歴史をリミックスした未来の姿が、目の前で展開される。
それは、ほんの少し違和感があるけど、ふしぎなくらいしっくりと身体になじんで静かな歓喜をよび起こす。
確かに。アート展でも音楽会でもなく、誰も体験したことのないパフォーマンスだった。
…ふぅぅ……たのしかった…✨
最後に
この、とんでもない"場"を、企画し実行された小川加恵さんに、心からの尊敬と感謝と拍手を。
3ヶ月間、追跡日記を読んでくださったみなさん、本当に貴重な時間をありがとう。
ステラーク氏が投げかけてくれた、"身体性"についてはこれからも考え続けていくだろう。
そして、いつも最高にエッジィなメディアアーティスト落合陽一さん。
…追いかけても捕まえても、その瞬間に形を変えていくのは、彼自身かもしれない。
彼の新たなパフォーマンスアートを、メイキングからリアルで体験できたことは、人生でも5本の指に入るくらい、刺激的で喜びに満ちた時間でした。
最後まで読んでくれて、ありがとう。
…この感動を共有します✨