漆器のワークショップ
浅草駅から寒空の下を歩き、会場の「ごはん×カフェmadei」 の扉を開けると、ふわんと温かい空気に包まれました。出迎えてくださった漆器のワークショップ主催の「漆とロック」代表の貝沼航さんやお店の方々の醸し出す空気が柔らかく、「はじめまして」というより「ただいま」という懐かしい心地がしました。
卓上のポットにはチャイが入っていて、ウェルカムドリンクとしてお互いに漆器に注ぎ合ってくださいね、とのこと。
「お互いさま」って温かい言葉ですね。
恩送りをするように、隣に座った方にそのメッセージを伝えてチャイを注ぎ、初対面の参加者の方々と自然に打ち解けることができました。
漆器だからと畏まらず、大切だからこそ自由に使う。この自在な発想に感じ入ります。
陶器のカップにはない、自分と器が地続きのようなふしぎな感覚ースパイスのたっぷり効いたチャイの土の恵みごと、さらには木の温もり、漆の温もりごと身体に入ってくるかのようです。
身も心もすっかり温かくなると、漆をめぐる貝沼さんのお話がはじまりました。
「木のくに」の人びとが一万年以上のときをかけて作り続け、使い続けてきた木の器。これを漆の樹液でコーティングすると、木であっても水を容れられるようになります。そればかりか、漆は菌にも強く、硫酸にさえ侵されない丈夫な器となるのです。
縄文の人びとが漆を見出すまでに、自然界にあるどれほどの成分で試行錯誤が重ねられてきたことでしょう。
漆器を扱うことは、はるかな時間をかけて育まれた智慧や勇気をいただくことなのですね。
けれども、漆の木は繊細で自生することがないそうで、いにしえから、こまごまと手をかけて育まれてきたのだそうです。
漆は自生できないほど弱いからこそ、強い樹液で身を守ろうとします。
弱い漆の命が人びとの優しさによって守られ、時をかけて極上の強い漆液を生み、人びとの暮らしを守り、人びとを生かすという循環…
「めぐる」という名のこの漆器に籠められた深さに、思いを致しました。
(続く・・・)