蚊帳ナイト
蚊帳をしたい
子供の頃祖母の家に行くと、寝る時に蚊帳を吊ってくれた。えんじ色の蚊帳で和室の四方の柱に括り付ける。
子供だった私は大はしゃぎ。弟と従姉妹と、蚊帳の中に敷き詰められた布団の上を転げ回った事を覚えている。
蚊帳から見る、外の世界はぼやけて見えてそれがなんだか嬉しかった。さっきまで花火で盛り上がった庭も暗くて、遠くに光がぼんやり見える感じがとても好み。リーンと風鈴がなっている。
蚊取り線香も焚いて貰えば完璧な夏の夜だった。
祖母の家の庭には、小さな池があって常に水が流れる音が聞こえてくる。寝る時はその音を聴きながら、眠りに落ちるのだ。
止まらない水の音は、起きている時は聴こえないのに、みんなが寝て静まり返ると聴こえてくる、特別な音。
今住んでいる家に和室はないし、蚊帳もない。
でもあの非日常な空間と、なんだか守られている安心感のある空間をもう一度味わいたい。
私の夏のイメージはあの日の祖母の家の中。
夏になるとずっとあの蚊帳のある光景を求めている気がする。
息子には同じ様に大人になった時に思い出す光景はあるのかな。
あるといいな。
蚊帳
私の永遠の憧れと郷愁。
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