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【書籍レビュー】#04 「Q」 呉 勝浩著
人は熱狂的に、妄信的になれる何かを求めたがる生きモノ。それは自分の足で立つことが怖いからなのだろう。
完成された美しさ、完璧な思考や思想。人は完璧にあこがれる。
それは太古の昔からずっと変わらない。絶対神や神話の世界、イデアの世界を作り崇めるのはそのためなのだ。人間は完全ではなく、愚かで、卑怯で、醜い。
だからこそ、完璧な存在を求める。完璧であろうとすればするほど、自らの矮小さを思い知り、自己嫌悪、自己否定へと落ちていく。
自ら奮起し、完璧であろうとするも、自分よりもさらに完璧なものにあこがれを抱き、その対象に対して、畏怖し、妄信し、熱狂し、依存していく。
それは、自信の無さゆえのものである。
自らの足で立ち、自ら生きると声を大にしていえる人間は少ない。これまでの歴史において、神になろうとしたもの、又は、偶像化されてものは多い。それは多くの自身なき民を誘導するため、はたまた思想統制を行うために作られたものもある。
担ぎ上げられて本人にとっては迷惑な話だ。
欠陥や弱さを持っているにも関わらず、完璧を求められ、大衆の前ではそのようにふるまう。時代が、世界が、民衆が求めるからこそ、自信なき民が溢れる時代にはこれらの存在が必要となるのだ。
Qは美しく、人離れするほどの身体能力を持ち合わせる。
そんなQを世界は放っておかない。
世界のこと、人間のことになんて興味がない彼にとっては、そんなことはどうでもいいこと。だが、彼を取り巻く大人や世界は、彼のカリスマ性や神秘性、完璧性をより演出し、偶像としてを作り上げてゆく。
それは、閉塞してしまった社会に対して鬱屈とした大人が描いた道。Qを利用して、大人が、自信がないモノたちが、世界に復讐をする物語。
誰しもが欠点をもっている。
誰しもがトラウマを持っている。
そして誰しもが社会や世界に対して、不満を抱えている。
私たちは被害者であり、加害者なのだ。