クレオパトラよ、在れ!
「オラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!!」
唐突に失礼いたしました。
上のセリフ、JOJOの承太郎とディオだと一発で分かりますよね?
キャラが立ってるってすげえなぁ、私はどれくらいの情報量で誰って分からせられるかなぁ、とぼーっと思いました。
今回は、そんな感じのぐだぐだコラムです(*´ω`*)
え~、先日、図像学(共に描かれているモチーフで、どの神/人物であるかを読み解く学問)の記事を読んでいる時に、ふと「どの程度まで表現を簡素化しても判別できるだろうか?」という悪戯心に満ちた問いが湧きました。
文章の「お約束」を書いた拙稿【読み解き、初歩。】の内容にも通じる話なのですが、台詞ひとつでどのキャラか分かるって面白いですよね。
例えば……
「ごめんなさい。こんな時、どんな顔すればいいのか分からないの」
「笑えばいいと思うよ」
綾波レイと碇シンジを思い浮かべますよね。
「三千万円いただきましょう」
ブラックジャックですね。
「殿中でござる、殿中でござる」
浅野内匠頭と吉良上野介でしょう。
「本能寺が……っ!!!」
燃えてますね。織田信長と森蘭丸と明智光秀を思い浮かべるでしょう。
「おばあさんのお口はどうしてそんなに大きいの?」
赤ずきんちゃんですね。
「鏡よ、鏡……」
白雪姫の継母、魔女ですね。
「おまえの口にくちづ……」
敢えて途中で切りましたが、サロメだと分かりますよね。
例を挙げるとキリが無いですね(/・ω・)/
枚挙に暇がないって書いた方が上品かもしれないっすな。
まあ、とにかく「一言で分かる」って面白いなぁと思ったんです。
ここで、ふと……
クレオパトラは、どこまで簡素化できるか?
というネタを思いつきました。要は一発ギャグですね。
めちゃくちゃ金をかけた重厚な大作、ハリウッド映画『クレオパトラ』では、彼女が登場しただけで「あ、クレオパトラだ」と分からせる為に……
(1)豪華なエジプト風の王宮や街並み、古代人たちの群衆
(2)豪華なエジプト風の衣装と、黒髪おかっぱに黄金の冠と髪飾り
(3)豪華なエジプト風メイクの妖艶な美女エリザベス・テイラー
(4)かしづく侍女や、取り巻きの神官たち
(5)エジプトに進駐しているローマ軍
(6)イケメン将軍のカエサルとアントニウス
等々、それはそれは手の込んだ大量の視覚装置を、これでもかと言うほど用いています。私が『クレオパトラ』を観たのはだいぶ前なので、記憶が薄れていてうろ覚えなのですが、それでも信じられないほど豪華だった事だけは覚えています。あれは金と権力が満ち溢れているハリウッドだから出来た演出で、それこそがハリウッドが持つ他の追随を許さない魅力であり面白さの源泉でもあるのですが、とてもじゃないですが個人が趣味でやれるものではありません。
あれを漫画で書こうとしたら確実に死にます(笑)
それで……
もっと気軽に、作画コストを低く抑えたパロディ漫画などで、クレオパトラが登場する最初のワンシーンだけで「あ、クレオパトラだ」と分からせる演出を、どこまで簡素化できるか、やってみたいと思ったんです。
私たちが普段、クレオパトラと呼んでいるのは(研究者さんなど例外もあるとは思いますが)プトレマイオス朝のクレオパトラ7世です。
プトレマイオス朝は、アレクサンドロス大王の死後、麾下を離れた将軍プトレマイオスが開いた王朝で、ギリシャ系でありながら円滑な統治の為にエジプト文化を尊重し、王の娘に王位継承権が付属しており王女と結婚する事で王に即位できる制度も踏襲したはずです。エジプト王家に顕著な近親婚の伝統はその制度の故ですし、紀元前14世紀の話になりますが、ツタンカーメンの妻アンケセナーメンが後に大臣アイと政略結婚を強いられた(らしい)のも彼女が王位継承権を付与する権能を持っていたからです。※うろ覚え。
クレオパトラの七歳年下の弟にして、夫でもあった(共同統治者と表記される事が多い)プトレマイオス13世は、実は王位継承権は持っていなかったんですよ。姉でありエジプトの女王でもあるクレオパトラを追い出して、神官たちと共にテーベを牛耳っていたというのに驚きですねΣ(・ω・ノ)ノ!
……という四方山話は置いといて、もっとポピュラーな話題をば。
洋の東西、今昔を問わず、みんなが好きな話題と言えば、恋バナですね。
恋バナ、恋人……うん、良さそうですね。
クレオパトラの恋人と言えば、カエサル。
でなければ、アントニウスですよね。
「恋人への呼びかけ」は、誰を恋人にしている人物か推察させるのに非常に有効な演出なので、コレでいきたいと思います。
カエサルには彼自身が主人公の物語が選び切れないほどあるので、カエサルと並べるとクレオパトラは添え物にしかなりません。カエサルには生涯の恋人となったセルウィリア(よく描かれる「ブルータス、おまえもか」のブルータスの母。このブルータスは別のブルータスを指してんじゃないのかという説もありますが、その話は別の機会に……)が居るので、カエサルを用いてクレオパトラを表現するには「セルウィリアではない」という記号が必要になり、簡素化には向かないので除外します。
カエサルは恋多き男で、恋の噂が多過ぎるし、ミトリダテス王とすら醜聞が囁かれていたほどなので、彼の恋人は限定しづらいのですわ。
その点、アントニウスは条件が良いですね。シェイクスピアの『アントニーとクレオパトラ』のお陰でクレオパトラの恋人として有名ですし、アントニウスはカエサルと違って恋少なき男なのです。
アントニウスと恋愛関係(=婚姻関係とさせてください。アントニウスの恋人として歴史に残っているのはクレオパトラだけで、クレオパトラもアントニウスと結婚式をしたという逸話もありますし、他二人の女性は婚姻関係によって歴史に残っています)にあった女性は、クレオパトラの他には、影の薄い最初の妻フルウィアと、彼女と死別した後に政略結婚で娶った妻オクタウィア(後のローマ帝国初代皇帝アウグストスの姉)しかいません。
この二人は「アントニウス」と呼びかける女性としては、カエサルに対するセルウィリアほどの強い印象はありませんね。
劇中に出てくるキャラならば、ほぼ除外できるとして構わないでしょう。
はい、「アントニウス」と呼びかける女性はクレオパトラです。
だいぶ強引な論ですが、漫画の一コマ目で、とにかく「アントニウス」と呼びかけるだけで、「あ、クレオパトラだ」と思わせられる最低限を探っていきたいと思います。
仕草は現代的なものではなく、オペラなどでよく見る、両手を互い違いに宙に差し出す時代がかったポーズにさせて頂きたいですね。
うん、こんな感じ。(SDモデルの扱いが下手なのは見逃してっ)
なんか仕草だけで「高貴な女性」って分かりますよね。
なんならこれで「アントニウス」って呼びかければ、分かる人には充分にクレオパトラだと分かる気がします……が、ちょっと厳しいかな。
髪型を黒髪おかっぱにして、エジプト風の黄金の髪飾りを付ければ、かなりクレオパトラですね。そこまで揃っていれば、なんなら衣装はエジプト風のドレスではなく、ジャージでもOKな気がします。
うんうん、この辺りが際どいラインって感じがします。
よし、これを結論にしましょう(/・ω・)/゜
高貴な女性っぽい仕草で、黒髪おかっぱで、エジプト風の黄金の髪飾りを付けて、「アントニウス」って呼びかけていたら、それはクレオパトラです。
あぁ……なんていうか、しょうもない事をしてしまいました(笑)
こういう、しょうもない思考実験、楽しいですね~♪
また懲りずにやると思いますっ☆
fin