Thomas Lyndon

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MIMMIのサーガあるいは年代記

1/n              承 前 「全宇宙の高貴にして偉大なる支配者かつ全知全能の神に等しきMIMMI皇帝! 皇帝陛下にとこしえの栄えあれ!」  まずはこの物語を始める前に、宇宙一邪悪で狡猾、残忍と言われるMIMMI皇帝の姿について語らねばなるまい。ミンミ皇帝は壮年のたくましい男性として描かれ帝国内に流布されているが、真実は分からない。  クリンゴン星の荒野に潜む隠者は、本当は電脳の集合体でバーチャルな存在だが統治の便宜上、ホログラムであのような姿を創出して

    • 本邦キラキラネームの起源とも言われる森鷗外の長男の名前についての長年の疑問

       文豪森鷗外の長男の名前を「於菟」という。中学校か高校の国語の授業では、鷗外は子供たちの名前をドイツ語風に名付け、「於菟」はオットーにちなんでいる、と教わった。鷗外の経歴からすればおかしくない。しかし、小さな疑問が残ったのを憶えている。  それは「於菟」というあまり見馴れない漢字を使っている点である。オットーの当て字はいくらでもみつかるだろう。  この小さな疑問は、長年放置されていた。いや、忘れていた。究明するには必要性も動機も小さすぎた。  しかし、最近、書店で目についた

      • 地上げと云えば、『地上の星』が流行って随分経った頃、職場の若い同僚が曲名を、 「じあげの星」と読んだ。 わたしは、なんと一般常識と教養にあふれた職場だと、いたく感動した。 そこで、カラオケ用の替歌『地上げの星』を作った。 「つばめよ高い空からおしえてよ 地上げの土地を……」

        • 世界長者番付トップ10に入ったら、六本木を地上げしてべコ(牛)飼って、港区白金台でコイン精米機数百台を設置したい。夢です。お金儲けの方法知らないけれど。 https://www.jiji.com/jc/article?k=2024090400909&g=int https://www.youtube.com/watch?v=UzRVEQDxiOo&ab_channel=Tacs12%28Keido%29

        • 固定された記事

        MIMMIのサーガあるいは年代記

        • 本邦キラキラネームの起源とも言われる森鷗外の長男の名前についての長年の疑問

        • 地上げと云えば、『地上の星』が流行って随分経った頃、職場の若い同僚が曲名を、 「じあげの星」と読んだ。 わたしは、なんと一般常識と教養にあふれた職場だと、いたく感動した。 そこで、カラオケ用の替歌『地上げの星』を作った。 「つばめよ高い空からおしえてよ 地上げの土地を……」

        • 世界長者番付トップ10に入ったら、六本木を地上げしてべコ(牛)飼って、港区白金台でコイン精米機数百台を設置したい。夢です。お金儲けの方法知らないけれど。 https://www.jiji.com/jc/article?k=2024090400909&g=int https://www.youtube.com/watch?v=UzRVEQDxiOo&ab_channel=Tacs12%28Keido%29

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        • 麗子のことなど
          3本
        • MIMMIのサーガあるいは年代記
          70本

        記事

          夏あざみの弔い  #詩のようなもの

                   Ⅰ ながい道脇は たけだけしい緑が擾乱していた やっとたどりついたのは リヨンの市場で 城壁のはずれにあった いやになるほど混沌で 騒がしく 卑猥な陽気がつまっている 泥と牛馬の糞尿は混じり合い 幼子たちはま転びる    「ほれほれ、まるまる肥った元気なアヒルだ。    一匹たったのドゥニエ硬貨2枚。小麦粉ならこ    の麻袋一杯にしとくよ。安いよ、買っとくれ」 眇の老いた農婦は 袖口と汚れたペチコートに 研すました青い匕首を隠している ア

          夏あざみの弔い  #詩のようなもの

          川柳

          二年前につくった人生初(たぶん)の川柳です。お嗤いください<(_ _)>  盂蘭盆会 与一も 茄子の馬にのり  *字足らず

          一月にみた不思議な夢(再掲)

           五日ほど前に見た夢である。今までにない形態の夢だった。  夕方か夜の暗いなか、電車で財布を置き忘れた。しかたなく銀行で預金を三万円ほどおろし、クリーム色の綿製の袋に入れておいたのだが、これも座席に置き忘れてしまった。深緑色の、京阪電車普通車両の座席のような色の上に、クリーム色の袋が三角型の形でおかれている情景が目の底に残っている。  駅に紛失を届けようと最寄りの駅で下車するのだが、路線名が分からない、また降りた駅名もプラットホームに掲出されていない。行き先の駅名は書いてあ

          一月にみた不思議な夢(再掲)

          麗子のことなど(1) -再掲-

          某氏の「玲子」という女性にまつわる連詩に触発され、同名の女性を追憶した残滓である。  大学一年生の夏、文芸部に入部した。  一ヶ月前に新築の建物に移転したものの、部屋は建材見本のように真新しいはずだった壁はすでに汚れ、黒鉛筆と赤インクで落書きされていた。かつての部室から運んだものらしい木造の傷だらけの歪んだ長机、まともに座れそうにもない椅子が散らばっていた。ページが開かれたまま、あるいは表紙がちぎり取られた雑誌が、あちこちに崩れかけた堆積になっている。まるで遺跡発掘直後の散

          麗子のことなど(1) -再掲-

          夏がくれば思い出す

           夏がくれば思い出す。夏休みの宿題の読書感想文  何を書けば善いのか未だに理解できない。  文芸評論ともまったく違い、後年、高校生読書感想文最優秀作品なんかを新聞で読んでも、『それでどうなの? その読み方、理解しかないの?』としか思わなかった。    小学生高学年では課題図書の指定がなかったので、海外SF小説を題材にした。感想は『それなりに面白かった』程度の感想しかなくて、指定原稿枚数を充たすため、やたら粗筋だけを書いた記憶がある。  最悪だったのは、中学三年生かに図書指定

          夏がくれば思い出す

          初夏ものがたり

          『人は暗いところでは天使に会わない』  山尾悠子「アンヌンツィアツィオーネ」より    山尾悠子著「初夏ものがたり」を読む。特に第一話「オリーブ・トーマス」が好みである。イラストも題名にふさわしく素晴らしい。    これは彼女の初期作品で、みずみずしく爽やかな小作品である。と同時に、現在の作品につながる特徴が既に多くあらわれている。  近年の作品のような難解めいた文体ではなく、そのためか却って第一話から深読みしすぎていた。率直に愉しめばいいのだ、と第三話あたりから気づいた。

          初夏ものがたり

          盂蘭盆会二題(その2)ーはるか地蔵盆のまえに #詩のようなものになりたかったもの

          オレが憎むのは 夜ふけに歌いだす蝉のゴスペル 蛍光灯のチック症に 蛾のフラダンス それに 汗で生乾きの肌着 奪衣婆が のぞまぬものばかり オレの生皮が重すぎて 衣領樹が 折れはてた と怒る懸衣翁の愚痴をきいても うすら笑うだけ オレの罪業のは深すぎて お釈迦さまでも閻魔さまでも 深海探査艇でも 気がつくめえ 自分では 大天使ミカエルよりも清らかだと言いふらしてるが だれ一人きく耳もってねえ お地蔵さんに ベル薔薇(新品種です)を手向けても なんにもなりゃしねえって 

          盂蘭盆会二題(その2)ーはるか地蔵盆のまえに #詩のようなものになりたかったもの

          盂蘭盆会二題(その1)ー真夏の訪れ #詩のようなもの

          群盗は 山野を侵し 径を灼き尽くし 百日紅を咲かせた それは真夏の訪れの日 乙女の長髪をみだした熱風を はこび 彼女の汗ばんだ肌色を 想いおこさせる また 凍てつく魂までも 奪いつくした すべてが熟れはてる 盂蘭盆会は まだとおい

          盂蘭盆会二題(その1)ー真夏の訪れ #詩のようなもの

          こりゃあかんわ

           近頃SNSで弥助のことが盛んに話題となっている。  弥助とは、16世紀後半イエスズ会宣教師ヴァリニャーノが帯同して来日したアフリカ出身者で、織田信長に仕えることになった人物である(わざと曖昧な表現にしています)。  弥助の織田家中での身分をはじめとして、X(旧Twitter)上などで著名な歴史家を巻き込んだ騒がしい論争が発生した。X上の論争恒例のとおり、不毛な罵倒や誹謗中傷合戦に陥りかけている。  弥助に関する文献資料は数少なく、『信長公記』と宣教師によるイエスズ会への

          こりゃあかんわ

          玻璃の祭日 #詩のようなもの

          つまるところ 玻璃のきらめきと 詰まるような真空でできていた 陰は濃くて たゆげに騒ぎ立ち 木の間隠れする国津神たちは むつ言をかわしあう これは アーニャおばさんの せんだく日のにおい ただ もの悲しいばかり 永い梅雨の 晴れ間の昼さがり 白いちぎれ雲から きららかな静謐が降りそそぐ 仮装したま夏 深海のホオジロザメが 流星群の定理にふれたようなもの 遠いむかし 涼しい窓ごしに みあげた北山に みつけた奇蹟の予兆

          玻璃の祭日 #詩のようなもの

          反 歌  ータタール人の砂漠を読みはじめてー #詩のようなもの

          『そう、もう手遅れです。私たちはこんなふうになってしまって、もう決してもとにもどることができないのです、とでも言うように』  「タタール人の砂漠」より ”手遅れ” なものか! シェークスピア劇中の亡霊の たわごとだ! やがて やがて 北の砂漠 みどりもない 霧におおわれた おぼろげな彼方から 国ざかいの向こうから 未踏の地から 刀槍を魚群のウロコのように輝かし 馬や駱駝を 五色に飾り立て 旗指物を林立させた タタール人の戦士たちが 喇叭も高らかに 疾駆してくる …

          反 歌  ータタール人の砂漠を読みはじめてー #詩のようなもの

          麗子のことなど (3)

           麗子と邂逅したこの日、仕事を終えて会社の通用門を出るとすでに午後十一時をまわっていた。プライベートのスマートホンをきぜわげに起動すると、麗子からのショートメッセージが何件も届いている。  その大まかな内容は、”Signal”というメッセンジャー・アプリの利用をうながし、このアプリで連絡を取り合うという指示で始まり、返信の再三の催促だった。  わたしは、通用門脇の乏しい街灯の明かりのもとで、”Signal”アプリをダウンロード、インストールして、さっそく返信した。くだくだと

          麗子のことなど (3)