見出し画像

さよなら冬 2023

こどもの頃は、春がきらいでした。
見事なヒネクレっぷりです。
でも、ほんとうに春になると
だるくて、何もやる気が起こらなくて
前に進みたくなくて、人と口を聞きたくなくて
何処にも行きたくなくなるのでした。
いい年をした大人のこじらせ方です。

今は立春がくると、ほっとします。
そんなに寒い土地に住んでいる訳でもないのに
もう寒い目にあわなくていいんだあ、なんて理由で
うきうきします。
来年にはまた寒い日が来るというのに。
ただのヘタレです。
でも、あっちもこっちも行きたくない~と
子どもなりに苦しんでいたあの頃より、楽な季節です。
生きて行きやすい方を選ぶように
ぼくの中で、いつのまにか調整が済んでいたようです。

子供の頃もヘタレだったのでしょう。
どれだけ生きても、変わらないものもありますから。

  ✫ ✫ ✫

冬の一季節を俳句にしました。


  直線の終わらぬ廊下冬来る

  吾が影に似たるカミソリ冬の鵙

  虎落笛前世に落ちし海の色

  ずたぼろの今日をしきりと朴落葉

  我が首を絞めて師走の座興かな

  客ひいて精肉売り場淑気満つ

  夜と生きる男の髪に初雪を

      ❅❅Kくんへ
  泣いたつて負けぢやないんだ寒卵

  この街はぼくと冬麗にはきゅうくつだ

  冬果の門をするりと黒猫は
 
                          梨鱗


✫おことわり✫
「きゅうくつ」
ただしい旧かな表記は「きゆうくつ」です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?